『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』35点(100点満点中)
ARTHUR AND THE REVENGE OF MALTAZARD 2010年4月29日より新宿ピカデリーほか全国にて公開 2009年/フランス/カラー/93分/配給:アスミック・エース
監督・脚本:リュック・ベッソン 撮影:ティエリー・アルボガスト 音楽:エリック・セラ 出演:フレディ・ハイモア ミア・ファロー ペニー・バルフォー ロバート・スタントン 声の出演:ミレーヌ・ファルメール ローフ ジェラール・ダルモン

山場がない…

ポケモンやドラえもん、ピクサー作品は言うに及ばず、こうしたフランスの作品まで映画館で楽しめるのだから、日本の子供たちの環境は恵まれている。とくに「アーサーとミニモイの不思議な国」(06年)の続編である本作は、監督のリュック・ベッソンがへそを曲げて声優をガラリと変えてしまった米国版と違い、前作どおりのキャスティングで吹き替え版を見られるという有利もある。

人間の世界に戻った少年アーサー(声:神木隆之介)は、再びミニモイの国で王女セレニア(声:戸田恵梨香)に会える日を心待ちにしていた。二つの世界をつなぐ扉が開く「10番目の満月」を控えたころ、彼の前に「HELP」と書かれた米粒が届く。王国からのメッセージと受け取ったアーサーは再度彼らを救うため、旅立ちを決意するが……。

祖父の家の裏庭には、体長2mmのミニモイ族の王国があった。そんなファンタジー作品である本作は、ヨーロッパのそれらしく伝統をふまえた確固たる世界観、繊細なビジュアル、そしてCGから実写へ違和感なく移行する映像技術により、米国とも日本とも違うかの国らしい子供映画として作られている。

とくに日常の延長線上、あるいは大人の視線の死角に胸躍る冒険世界が存在する、という子供向けファンタジーの王道にのっとった設定には安心感がある。それを忘れた近年のドラえもん映画などより、よほど地に足が着いている。

アーサー修行編というべきこの2作目は、低年齢向きということもあってか刺激は少なく、展開は相変わらずのろい。なかなか話が進まないなあとイライラしていたら、そのままオチなしで終わるので仰天する。いくら三部作の二作目といってもこれはない。前作も同様の感触を得たが、これなら3本を1本にまとめる、あるいは百歩譲って前後編で十分。

劇中のキャラクターたちは、CGのミニモイ含め見た目にわかるほど成長している。中でもなかなか出てこないヒロインとの濃厚なキスシーンには驚かされる。日本の低年齢向けアニメじゃこうはいかない。考えてみれば前作からはや3年。急いで作らないとお客さんも成長して、そもそもシリーズへの興味を失ってしまいかねない。

舞台設定は決して悪くないが、どうにもぱっとしない。絶大な人気のあるリュック・ベッソン作品だけに期待も大きい。完結編はもう少し盛り上げてほしいと願う限りである。



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