『モンスターVSエイリアン』50点(100点満点中)
Monsters vs. Aliens 2009年7月11日(土)より、新宿ピカデリー他、全国ロードショー 2009年/ドリームワークスSKG提供/PDI・ドリームワークス作品 シネマスコープ/94分/日本語字幕:桜井裕子 配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
監督・ストーリー・共同脚本:ロブ・レターマン 監督・ストーリー:コンラッド・ヴァーノン 脚本:マヤ・フォーブス、ウォーリー・ウォロダースキー 声の出演:リース・ウィザースプーン セス・ローゲン ヒュー・ローリー

みるなら3D以外にない

日本でも先日オープンした「IMAX デジタルシアター」のような巨大スクリーンで、立体映画版を見る。そうした楽しみ方でないと、『モンスターVSエイリアン』を十分に堪能することは不可能だ。

隕石に接触したせいで巨大化し、せっかくの結婚式が台無しになってしまったスーザン(声:リース・ウィザースプーン)。彼女はそのまま軍に捕獲され、他のモンスターと共に秘密基地に監禁されてしまう。そんな折、地球にエイリアンが襲来。その圧倒的戦力に困った政府は、スーザンとモンスターたちにエイリアン退治の望みを託す。

巨大化しただけで化け物扱いされてしまったスーザン(いや十分化け物と思うが……)は、当初は「私はモンスターじゃない、人間よ!」と叫んでいるわけだが、人助けしても差別される他のモンスターたちの境遇に同情し、徐々に自らの考えを変えてゆく。かつての婚カツにいそしむ若い女の子ではない、本当の自我に目覚めるという成長物語だ。最近流行の、擬似家族要素も盛り込まれている。

「地球を救っても、オレらを見る目は変わらない!」とのモンスターの悲痛な叫びが、主人公スーザンの胸を打つ。きっとこのシーンで、米軍関係者の多くが涙するのであろう。

『モンスターVSエイリアン』の問題点のひとつに、日本語版のメインキャストの声のテンションが、画面に出てくるキャラクターの表情のそれと大きくずれている、という点があげられる。外国人特有のややオーバーアクトな表情を元にアニメにしているのだから、本来声優は相当ハイテンションな演技を当てなくてはならない。だがなにぶん、例によってタレントキャストなので、そんな芸当は望めないというわけだ。

もうひとつの問題点は、作品の長所と背中合わせになるが、「本作は最初から3D上映を前提に作られた」というもの。3Dと2Dは演出法に大きな違いがある。たとえば立体メガネをかけているとただでさえ目に負担がかかるので、激しい動きのカットは控える、等々。

だからこれを2Dで見てしまうと、妙におとなしい、あまりぱっとしないアクションだな、と感じることになる。立体映画については、上映施設の普及の面でまだまだ過渡期といった段階だから、しばらくはこうした評価の作品が続く可能性がある。

残念ながら私が見たのは通常の2D版だったので、この点数になった。IMAXでみたら、きっと違った評価になるだろう。



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