『ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛』55点(100点満点中)
The Chronicles of Narnia: Prince Caspian 2008年5月21日(土)より、全世界同時公開!! 2008年/アメリカ、イギリス/150分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン

あれから1300年が過ぎたナルニア国は滅亡の危機に瀕していた

映画「ナルニア国物語」シリーズは見た目が子供じみているため、宗教的教訓要素を見出し楽しもうといった大人っぽい味わい方がどうもやりにくい。

摂政ミラースにより命を狙われたカスピアン王子(ベン・バーンズ)が伝説の角笛を吹くと、人間界からペベンシー家の4兄弟がやってきた。彼らが君主として君臨した頃(前作のラスト)から1300年経つナルニア国は、人間であるテルマール民族により荒らされ、それ以外の種族は森の奥に追いやられ滅亡寸前であった。ピーター(ウィリアム・モーズリー)やスーザン(アナ・ポップルウェル)は生存者を結集してテルマール軍との決戦に備える一方、末っ子のルーシー(ジョージー・ヘンリー)は姿を隠した創造主アスランを探しに行く。

4兄弟が長いこと王様としてナルニアを統治した経験があることは、前作をみて頭ではわかっている。民衆の前で堂々たる態度を発揮するのも当然だろう。

が、見た目がお子ちゃまのせいでどうも貫禄を感じられない。彼らこどもリーダーが軍隊を率いて殺し合いをする様子は、悲しいほどに説得力が無い。そのくせ彼らこども軍は、剣で相手ののどをかっ裂き、顔面をつき刺し、弓で急所を貫く等々、大人のプロ軍人相手に平然と大殺戮をやっているわけで、なんとも後味がよろしくない。

弓矢おねえちゃんやベホマドリンクの幼女はなかなかいい演技と顔立ちをしているが、男二人の影の薄さは相変わらず。新登場のカスピアン王子のイケメンぶりが半端じゃない分、よけいにかすんでしまった。

屋外ロケが多い分、景色がまんまニュージーランドなので、ファンタジーの世界にいる気がしないというのもマイナス。自然豊かな学校の裏庭で学芸会の演劇を見せられているような印象だ。

お話も、悪い意味で聖書を読んでいるような退屈さ、説教臭さを感じる。一言で言うと、あからさますぎるのである。要は神を信じよというわけだが、こっちとしては尻の穴丸出しでブラブラしてるあの大ネコには、さっさとお前の方から助けに来いと言いたくなる。

だいたい無勢のナルニア軍の内訳ときたら、森のクマさんやネズミ、トリ等が集まった文字通り烏合の衆。完全無欠の重装歩兵の人間軍(ビルのような投石器まで装備)と戦争して勝てるわけが無い。かわいらしく立ち尽くすクマさんを見て、「コイツらじゃ無理だろ」とほほえましい笑いを浮かべてしまうのは罪であろうか。

……などと失礼千万な見方をしたくなるほど、原作に思い入れの無い身にはキツい一本であった。アスランが気まぐれネコに見えぬよう、もうちょい言及があれば済む話かもしれないが、頭じゃわかっていても目で見てどうしても受け入れがたい。そんなケースもままあるのだ。



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