『ちーちゃんは悠久の向こう』50点(100点満点中)
2008年1月19日(土)よりシアターN渋谷、シネマート新宿ほか全国ロードショー 2007年/日本/94分/配給:シナジー

甘酸っぱい青春学園もの……だと思っていると?!

日日日(あきら)の人気ライトノベルの映画化『ちーちゃんは悠久の向こう』は、仲里依紗(なかりいさ)主演でエンドロールに奥華子の歌がかかるという、アニメ版「時をかける少女」人気をあてこんだような人材配置となっている。同じせつない系の青春恋愛ものであるこの両者、ファン層も重なっているという読みなのか。

高校生のモンちゃん(林遣都)にとって、幼馴染の同級生ちーちゃん(仲里依紗)は一番の親友。オカルト好きのちーちゃんに、学校の七不思議なんて迷信めぐりを付き合わされるなど、毎日振り回されっぱなしだが、手作りのお弁当を作ってきてくれたりする人なつこさは、どうしても憎めない。やがてそんな二人の間に、何かとモンちゃんに親切にしてくれる弓道部の先輩・武藤(高橋由真)が入ってきて……。

リアル紺野真琴こと仲里依紗は、スウェーデン系の血が入っている分、ちょっと普通の高校生離れしたルックス。その浮き加減が、デンパ的な行動をうまく中和しており、ちょっと不思議なムードの学園ものとして成立させている。まるで中学生の男が考えたような理想の女の子的な、非現実的なキャラクターだが、あのフシギカワイイ顔でやられると、これがなかなかいい感じなのである。

そんなわけでこれを見に行く原作未読のお若いみなさんは、存分に甘酸っぱい高校ドラマを楽しんできていただきたい。

……と、ここまでが"表"超映画批評。ここから先は、上記で見に行こうと思った人は読まないでいただきたい。ネタバレはせぬよう心がけているが、映画の性質上、保証はできない。

ということで、私のあけすけな鑑賞感をかいてしまう事にする。まず申し上げておくと、私はこの原作は読んでいない。しかし、本当に残念なことに、開始数分で結末がわかってしまった。よって残りの90分間は、それを確認するだけの作業になってしまい、本作の魅力を十分堪能することはできなかった。だが逆に、そのおかげで監督さんが気を使った伏線の数々を、注意深く拾っていくことはできた。

おそらくティーン向けということで、少々わかりやすくしてあるのだろう。どんなに鈍感な人でも、数十分もするとネタは割れるはず。ただ、それにしてもこれだけ大胆に伏線を張っているのだから、真相がわかる直前に、あからさまにそそのかしてしまうようなやり方は避けてほしかった。見ているほうは、何をいまさら、という気持ちが強くなってしまう。

ところで原作発行元の新風舎は、映画公開を前にしてタイムリーにも(?)倒産してしまった。彼らにとっては、これは例外的な大ヒット作の映画化だったというのに、お気の毒な話である。まあ、本を出したい一般人をカモに、ぼったくり価格で事実上の自費出版をさせる詐欺まがいの商売が、いつまでも続いてよいはずはない。被害者と共に直接取材し、チャンネル桜の番組でとりあげるという形でこの問題に関わった私としても、納得の成り行きであった。



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