『銀色のシーズン』40点(100点満点中)
2008年1月12日(土)全国東宝系ロードショー 2007年/日本/1時間48分/配給:東宝

スキーアクション大作(上げ底)

『銀色のシーズン』は、スキーを題材にしたブロックバスター的映画……を狙ったアクションドラマである。

スキー客が命綱の寂れたある観光町は、客寄せの目玉として雪の教会での結婚式を企画した。いちはやく東京から到着した花嫁の七海(田中麗奈)を、大歓迎で迎える町内会の人々。そんな彼らの悩みの種は、ゲレンデを暴れまわる凄腕スキーヤー城山銀(瑛太)率いる悪ガキ3人組。ところがひょんな事から、その銀はスキー初心者の七海をコーチすることに。

スキー初心者には、荒唐無稽な前半のスキーアクションが楽しい。屋根の上や川の水面、階段の手すりなど、縦横無尽にすべりまくる姿は、とっても爽快だ。

逆に上級者には、後半のモーグル選手権など、リアリティあふれる競技場面が見所となろう。ここでは映画スパイダーマンの撮影でも活躍した特殊カメラ"スパイダーカム"を駆使した、邦画初の斬新なカメラワークが味わえる。……との触れ込みであったが、完成品は意外と普通。ありがちなスポーツ中継そのものになってしまった。せっかく映画なのだから、もっと自由で大胆な編集を期待していたのだが。

『銀色のシーズン』は、羽住英一郎監督ということで同監督の『海猿』のスキー版的な位置づけをされているが、はっきりいって無理やり大作にしようとしすぎだ。

たとえばBGMなど、まるで核弾頭を盗んで全米破壊を企むテロリストと対決するかのような大げさなもので、見ていて恥ずかしい。せっかく最高のコメディエンヌ田中麗奈がいるのだから、その才を生かした笑いで時折肩の力を抜いてやればいいのに、そういうスマートさが本作にはない。

結果、妙に上げ底感を感じる、力はいりすぎのハリボテ映画となってしまった。同じお気楽スキー映画でも、バブル期に大流行した「私をスキーに連れてって」(1987)のように、身の丈にあったバランス感覚でこぢんまりとまとめれば良かったのだが。

それでも出演者監督一同、スキー初心者ばかりで作ったにしては、スキーの楽しさを表現するという点で平均以上のものがあり、友達同士で見に行けば、次の週末にスキー場に出かけたくなることは確実だ。



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