『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』50点(100点満点中)
NATIONAL TREASURE : BOOK OF SECRETS 2007年12月21日より日劇1ほか全世界同時ロードショー 2007年/アメリカ/124分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン

陰謀論+観光地めぐり+宝探し

『ナショナル・トレジャー』シリーズは、決して本格的なアドベンチャームービーではない。しかしそのお手軽さは、ハリウッドの手練れたエンタメ職人たちが完璧に計算して打ち出したものであり、なかなか心地よい。

リンカーン大統領暗殺犯の日記の一部が発見された。歴史学者兼冒険家のベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、彼の先祖トーマス・ゲイツの名がそこに記されていたと知らされる。トーマスの無実を晴らすため、ベンは恋人(ダイアン・クルーガー)らの協力を得て、カギとなる秘宝探しの旅に出る。

このシリーズを一言で言うと、陰謀論+観光地めぐり+宝探し、のお気楽アドベンチャーだ。日本で言えば、湯けむり殺人ミステリーみたいなもの。それに冗談みたいな金額をつぎ込んで、豪華にしたと考えればいい。せんべいでもかじりながら、こたつで見るのに適している。

今回主人公はロンドンからパリ、そしてアメリカと世界各地を飛び回る。バッキンガム宮殿や自由の女神、4人の大統領の顔の彫刻が有名なラシュモア山など、ロケ撮影なので現地の雰囲気をたっぷりと味わえる。

ストーリーや謎解きなどは、相変わらず実にテキトー。謎や難題が次々と現れるが、ニコラス・ケイジがそれを解く速度はもはや異常。名探偵コナンも真っ青の即答ぶりだ。最初から答えを知ってるんじゃないかと思うほどの鮮やかな手口を、こちらは何も考えず(考える暇もなく)眺めるほかはない。ある意味、とても楽だ。

悪党が主人公の能力を利用して密かに追いかけ、宝が目の前に見えた時点でおもむろに登場。脅しながら一緒についてくるという展開。宝探しの映画はなぜこうも同じパターンなのかと思う。少しは背後に注意すべし。

エリア51とか、ケネディ暗殺など未解決事件の真相が書かれた本を、歴代大統領が受け継いでいるなど、扱うネタは前作同様面白い。世界的価値のある遺物が国土に眠っているなど、新しい国アメリカが歴史というものにいかに憧れているか。そのコンプレックスの根深さがわかり、じつに興味深い。

前作より撮影がぐんと良くなったので、カーチェイスなどそこそこ見ごたえがある。遠近感が弱まる望遠レンズの特性(マラソン中継で、後続ランナーが実際より近く見える画面を見たことがあるはずだ)を利用した絵作りなど、ダイナミックで迫力がある。

全体的にはマイルド味で、子供からお年寄りまで安心して見られる。お正月のおせち気分にちょうどいい一品だろう。



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