『屋根裏の散歩者』75点(100点満点中)
2007年7月7日から13日、シアターN渋谷にてレイトショー 2006年/日本/87分/配給:アートポート

嘉門洋子の演技とプロポーションは絶品

先週の「人間椅子」に続く、エロチック乱歩シリーズ第二弾。ミステリの古典である江戸川乱歩の原作を、現代風にアレンジした怪奇&エロティックなドラマだ。同名短編の映画化としては94年以来となる。

編集者の奈緒子(嘉門洋子)は、不気味な作風で知られる有名画家の取材で、彼が生前身を寄せていた東栄館なる洋館を訪れた。そこには一癖もふた癖もある人々が住んでいたが、唯一まともそうな少女マドカ(清水萌々子)の話によると、画家は屋根裏を好んでいたという。奈緒子は好奇心を抑えきれず、屋根裏を伝って住民らの部屋を覗きに行くが……。

のほほんと劇場の椅子に座っていると、冒頭から驚かされることになる。男性ではなく、女性主人公が他の部屋を覗きに行くというアレンジが物語に加えられているが、その最初から緊張感が持続し、何が起こるか予測しがたい。他人の不倫現場やエッチシーンを見ている分には楽しい(?)が、天井の小さな穴からそこにいるはずのない人物の恐ろしい何かを見てしまったとしたら……。

この屋敷には恐ろしい秘密がある。しかし一日数本のバスしか足がない、現代日本の陸の孤島たるこの館に、安全地帯はひとつもない。住み慣れた世界から完全に切り離されたヒロインは、はたして朝までサバイバルできるのか。いったい誰を信用し、頼るべきなのか。レイトショー公開にしておくにはもったいない、優れたサスペンスだ。

とりわけ主演の嘉門洋子の演技が抜群。暴力行為に遭遇したときの悲鳴のあげ方や恐怖にゆがむ表情など、最近の生ぬるいホラー映画のヒロインにはぜひ見習ってほしいほど。まるで、私生活でも本物の暴力行為を身近に感じるような特殊な環境にでもいるのではないかと想像してしまうほどの迫力だ。

彼女が夢の中で、舞い散る花吹雪の中、全裸で横たわるセクシーな場面がある。地味な服を着ている時はまったくそうは思えないのだが、これがまたビックリするようなプロポーションの良さ。小さな花びらが大事なトコだけ隠す憎らしい演出だが、あまりの美しさに目を奪われた。

このように絵画のごとく作りこまれた綺麗な映像もあれば、少々緩んだ体型がリアルな普通の女性が、ハダカでSM縛りされる生々しい場面もあり、セクシー面でもバランスがいい。もちろん、嘉門洋子自身が縛られ、攻められる様子も見ることができる。

作品として面白い上、サービスもよいので男性諸氏にこそすすめたい。いま話題の嘉門洋子が、体当たりでセクシーな場面を演じているのも、まさに旬といった感じ。上映期間が短いナマモノであるからして、お早めにお召し上がりのほど。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.