『ITバブルと寝た女たち』30点(100点満点中)
2007年6月9日よりキネカ大森にて2週間限定ロードショー 2007年/日本/95分/配給・宣伝:アートポート/宣伝協力:アルゴ・ピクチャーズ

お手軽でもいいから、エロにもっと気合を入れよ

バブル経済のころ、平凡な女の子たちがカネによって狂い、堕ちていくさまをレポートした家田荘子の『バブルと寝た女たち』。このベストセラーは、そのセンセーショナルな内容から何度も映画、ビデオ化されている。本作も同原作の映画化となるが、ヒルズ族などと呼ばれ世間をにぎわせたIT長者の女、という現代的な形に設定変更され、同時にタイトルもちょっとだけバージョンアップしている。

田舎から上京し、劇団員として女優を目指す牧田碧(三津谷葉子)。素朴な性格で、古いアパートでつつましく暮らす彼女は、あるとき悪友の麻美(三浦敦子)により、強引に合コンへと連れ出される。連れて行かれたのは今をときめくIT長者たちによるゴージャスなパーティー会場で、そこで碧は新進気鋭のオーナー社長(金子昇)に見初められる。

ポータルサイトの成功を皮切りに、M&Aで事業を拡大していく若き社長。モデルはもちろんホリエモンだろう。ただし、映画の彼はスリムでイケメン。Tシャツではなくスーツ姿で決めているし、六本木ヒルズで乱交パーティーを開くこともない。むしろそんな俗っぽい事から距離を置き、映画作りを支援したり、女優志望の碧を応援したりとさわやかなナイスガイだ。もし本人がこれを見たら、さぞ喜ぶことだろう。

そんなITバブルによって成り上がった男と、夢のようなリッチなデートを重ねるうち、ピュアな田舎少女だった碧はどう変わっていくのか。……なんて事は、実際のところどうでもいい。この安っぽいビデオ映画に人々が期待するのは、ヒロイン三津谷葉子が脱ぐか否か、それだけだ。

そして結果はこの点数でわかるとおり。その点、すでに全身公開済の三浦敦子が、まるでAVのような過激なHシーンを演じてくれているが、主役が出し惜しみした代わりというか、お詫びの粗品のようでなんだか哀れだ。ただ、ナチュラルなサイズの美乳は評価したい。

肝心の三津谷葉子だが、濡れ場や温泉入浴シーンなどいくつかの見せ場がある。そしてこの人の場合、三浦敦子と違ってなにしろ胸がでかすぎるので、そうそう簡単に隠しきれはしない。

たとえばビルから落下した人が、消防隊が用意した巨大なエアバッグみたいなヤツの中心に、無事ボワンと落下したときのように、隠そうとする男優の手から盛大にはみ出てしまう肉量は大きな見所。

また、ヘソ周辺の真っ白な肌をなめていくカメラのいやらしさもなかなか。ゆっくり移動しつつ、「隊長、あと推定3cm5mm でヘアに到達です!」とばかりに、男性客の期待をあおっていく。

とはいえ、やはりその先まで見せてくれなければこれ以上の点数はあげられない。もともと中身はカスみたいなもの。たとえば、演技力が見事なまでに皆無の三津谷葉子にIT社長が、「僕は君の才能を信じてるよ」 などと言う場面をみて、私は思わずお茶を吹きそうになった。

客は三津谷葉子を目当てにくるのだから、裸は無理でもせめてもう少しエロい事をやらせるとか、スタッフにはがんばってほしいところだ。今後もこうした作品はたくさん作られると思うが、ヒクソン・グレーシーとバーリトゥードを戦うぐらいの気合を入れて、主演女優に相対してほしい。



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