『守護神』80点(100点満点中)
The Guardian 2007年2月10日、日劇1他全国ロードショー 2006年/アメリカ/139分/配給:ブエナビスタインターナショナル(ジャパン)

主演二人のどちらかのファン向け

日本で大ヒットした『海猿』がハリウッドでリメイクされるという話をどこかで聞いて、それが頭の片隅にあったので、『守護神』のあらすじを聞いたときは「ああ、これがそうか」とずっと思っていた。……が、どうやらそれは違うらしい。沿岸警備隊の鬼教官に鍛えられる若き訓練生の訓練風景を主に描き、救命士としてデビューしたとたん、恐るべき難題に対峙するクライマックス。マジンガーZとテコンV程度のかすかな類似性は見受けられるものの、一応別物ということのようだ。

もう少し詳しく筋書きを書くと、ケヴィン・コスナー演じるこの教官は、これまで数百名を救ったと噂される伝説のレスキュー隊員。ところがある出来事をきっかけに、スクールの教官職に就くことになる。そこで出会うのが『バラフライ・エフェクト』のアシュトン・カッチャー演じる天才スイマー。その圧倒的な自信と若さを前に、教官と激しく対立するが……。というもの。いわゆるダブル主演で、お客さんの年齢にあわせてお好みのほうに感情移入して楽しんでください、という仕組みだ。

実績を残している大先輩に対し、やたらと自信家の若者というのはたいてい憎たらしく見えるものだが、アシュトンが演じるとそんなキャラでも好感を持ててしまう。この俳優の場合、いくらでもモテるだろうに私生活でバツ2熟女と添い遂げたり、弟の学費のために芸能界に入ったりと、ハンサムな上に性格までいいヤツっぽい先入観があるのがいけない。

それはともかく、本作では泳ぎ、体型ともに説得力があり、訓練シーンでも救助シーンでも安っぽさは微塵も感じさせない。これについては、50を超えたケヴィン・コスナーに関しても同様なので、監督の演出がいいという見方も出来る。

この二人が徐々に和解していく過程も、上映時間を長く取っただけあり拙速感がなく、十分にうなづける形でドラマを作り上げてある。二人の会話にはユーモアもあり、気が利いている。

メインストーリーの展開については完全に予定調和で、多少言葉がわからなくても楽しめる、全世界向けエンタテイメントたるハリウッドムービーらしいもの。本作を見る場合、この点には多くを望まないことが肝要となろう。

とはいえ、そうしたマスプロ映画としてのレベルはきわめて高く、うるさ型を除くほとんどの観客は十分に楽しみ、感動することが出来るだろう。なにしろキャストには華があるし、見せ場にも重厚な迫力がある。終盤の展開には蛇足感が否めないが、目くじらを立てるほどのものでもない。

いずれにせよ『守護神』は、映画らしいダイナミックな映像と、スター共演の華やかさといった要素を楽しむ点においては、高い点数を差し上げたくなる一本。少なくとも、これでもう『海猿』のリメイクを米国で作る必要はなくなったのではなかろうか。



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