『僕の、世界の中心は、君だ。』25点(100点満点中)

『世界の中心で、愛をさけぶ』劣化リメイク

いわずと知れた、『世界の中心で、愛をさけぶ』の韓国製リメイク。

男子高校生スホ(チャ・テヒョン)は、やさしい性格だがちっともハンサムではないから、自分がもてるとは露ほども思っていない。ところが、中学校のころから彼に想いをよせる女子生徒がいた。しかもそれは、クラス中のマドンナ的存在スウン(ソン・ヘギョ)だった。ボイスポケベルで愛を告白しあった二人は、順調に交際を進めていくが、すでにそのころスウンの身には、不吉な病魔の影が忍び寄っていた。

日本版オリジナルに比べ、ポケベル文化や、犬が客引きする民宿といった、韓国らしい独特のムード、文化を前面に押し出した作品になっている。明らかに、韓国人の観客向けにチューニングされているといった印象を受ける。そんなわけで日本人にとっては、原作小説の魅力であったノスタルジーを感じにくい。……となると、それをわざわざ日本人が見る意味がよくわからないが、まあそれは置いておこう。

主演はチャ・テヒョン。人気ブサメン俳優と称され、『猟奇的な彼女』をはじめとするロマンティックコメディではおなじみの顔。30代ながらがんばって高校生役を演じているが、今回はいつものお茶らけたキャラを封印し、シリアス一本槍の演技を見せる。これは彼のコミカルな一面を期待するファンからすると意外なところで、個人的な感想をいわせてもらえば少々息苦しい。非現実的なセリフまわしや行動など、リアリティなき演出が、そんな気分に拍車をかける。

相手役のソン・ヘギョは、なかなかの美少女ではあるが、日本版のヒロインはスキンヘッドまで敢行したあの長澤まさみであるから、残念ながら存在感では比べ物にならない。

また、ラブストーリーには、映像や風景の美しさは重要なポイントだが、韓国版セカチューは全体的に泥臭いというか、あかぬけておらず、かなり田舎くさい。

そんなわけで、本作はすでに日本版を見た観客にとっては、あらゆる点で劣化していることがわかり、あまり面白い映画ではない。

かといってこれをはじめてみる人にとっても、こうした難病ものは韓国映画ではもはやデフォルトであり、珍しくも何ともない。その設定を使って何か見るべきものを作り出したのかというと、そういうわけでもない。チャ・テヒョンらしいコミカルなムードもなく、似ても焼いても食えぬという感じ。駄目映画として笑い飛ばすということもできにくい。

唯一、邦題だけは、商売面からするとなかなか優れたものだ。原題の「波浪注意報」や「MY GIRL AND I」では何がなにやらわからないし、原作と同じというのも芸がない。同じ言葉でちょっぴり順番を変えただけで、なにやら新味あるセカチューリメイク版との印象を受ける。お涙頂戴に弱い人々にとって、この恥ずかしい邦題は、大きな効果を発揮するであろう。私としては、あまりオススメしにくいところだが。



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