『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』65点(100点満点中)

感動的な親子愛の物語

漫画家の一色まことがミスターマガジンに連載していた『花田少年史』は、かつて深夜枠でTVアニメ化されたことがあるが、このたびオリジナルエピソードを中心としたストーリーで実写映画化されることになった。

主人公の腕白少年、花田一路(須賀健太)は、凶暴ながら根は愛情深い母親(篠原涼子)、タクシー運転手をしている温厚な父親(西村雅彦)らとともに、少々度を越えて明るい花田家の一員として暮らしている。ある日一路は交通事故に遭い、天国に上りかけたところを女子高生の幽霊(安藤希)により救われる。その日以来、大の苦手だった幽霊が見えるようになってしまった一路の元に、様々な現世への未練を抱えた幽霊たちが現れるようになる。

『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』は、当初のポスターイメージがあまりに作品の内容とかけ離れており、私はひそかに心配していたが、どうやら別の絵柄のイメージを多用するようになったようで安心した。

さて、この映画は主に小学生くらい向けの感動ドラマに仕上がっているが、笑い面が比較的よく出来ているため、その先にある泣きどころもすんなり受け入れやすく、大人でも結構ホロリとさせられる。無論、子供向け邦画の常で、船が沈む場面やその他のVFXが使用される場面はかなり安っぽさが目立つし、物語も粗っぽい。

ただし、主人公の少年を演じた須賀健太やその母親役の篠原涼子、話のキーとなる女子高生役、安藤希あたりが各自、魅力たっぷりに動き回ってくれるので、なんとなく許せてしまう。とくに安藤希は、高校生離れした(年齢を考えれば当然だが)大人っぽい雰囲気で、笑顔は見ただけでこちらを幸せにしてしまうくらいかわいい。あんな幽霊なら毎日でも見たい。

幽霊たちは、何かやり残したことがあったり、何かを伝えるためであったり、恨みを晴らすためであったり、逆に誰かを守るためだったりと、それぞれ何かしら現世に用があってやってくる。彼らが絡む場面は、当初はドタバタのギャグが多いが、やがて女子高生幽霊の謎がとけるころには、真相の意外性がせつない感動を持って胸を打つ。花田一路は彼らに振り回されつつも(時には過去に連れていかれたりもする)、彼らから何かを得、何かを与え、成長していく。

そんな物語が伝えてくるのは、家族のすばらしさ、愛情というものの美しささ、だ。こうした正統派のテーマを、親子そろって味わうのも、たまには悪くあるまい。



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