『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』55点(100点満点中)

これを楽しめるかどうかは、前作をどう思っているか次第

前作『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』は、続編でもリメイクでもない、オリジナルの新作映画としては、驚くべき大ヒットを記録した。登場した週に、まだ3週目だった『踊る大捜査線2』をランキング首位から引き摺り下ろし、映画関係者を驚愕させた事件も記憶に新しい。

前作の大ホームランは本国アメリカでも同じで、このPart2にかける期待は日米ともに並々ならぬものがある。今回の『パイレーツ・オブ・カリビアン2』は、必勝を義務付けられた期待のドル箱コンテンツだ。

ちなみに一足早く公開された米国では、その大きな期待をさらに上回る特大ヒットを記録。商業的には、週末の興収記録でなんと映画史上最高額を更新し、年間ベストワンも狙える立場にいる。

さて、日本ではどうなるか。私はどうしても一般のお客さんたちの反応を見たくて、私の出身地に出来たばかりの、まだ新築の香り漂うMOVIX亀有、最強の10番シアターで行われた先行上映に出かけてみた。入りは上々、大きなこの劇場が満員に近い。さすがに、大きく期待されているようだ。

ジャック・スパロウ船長(ジョニー・デップ)は、最も恐ろしい男デイヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)への支払期限が迫っていた。負債はなんとジャック自身の魂。デービー・ジョーンズは、あごひげがタコの触手という無気味な姿で幽霊船を操る不死身の海賊。何とか助かりたいジャックは、ウィル(オーランド・ブルーム)やエリザベス(キーラ・ナイトレイ)を騙して、デイビーの弱点が隠されているとされる宝箱を探させるが……。

まず最初に断っておくと、前作の鑑賞は必須。それも、数年前に一度見たっきり、という程度じゃ不十分で、できればDVD等で細部まで復習しておくのが望ましい。でないと、とくにラストシーンなど、その楽しさを十分に味わうことができない。

『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』は、意外にも一見さんお断りの世界で、それどころかパート1の大ファンが見たとしても、結構ややこしいストーリーを持っている。半分寝てても筋がわかる、いつものお気楽ディズニー映画とは、大きく異なる。

その点さえ気をつければこの続編、特に前作ファンにとっては十分満足できる内容になっている。

ただし、ディズニーランドのアトラクション『カリブの海賊』の映画化というだけあって、本作の魅力は、お話の面白さより、世界観に浸るお楽しみの方。つまり、テーマパークのファンタジックな町並みを、いろいろと空想しながら歩く楽しみに近いものだ。

なにしろ普通に映画としてこれをみれば、途中で眠くなるほど中だるみはするし、年間最大レベルの超大作にしては、目立った見せ場、大スペクタクルがなく地味。ジョニー・デップやキーラ・ナイトレイ、そしてオーランド・ブルームの三枚看板は相変わらず健在だが、熱狂的なファン以外にアピールできるほどの演技の見せ場も、コメディとしての楽しさもないのだ。

また、致命的なのは本作が、来年5月に公開される完結編の序章としての位置付けをなされており、これ1本では映画としての体をなしていないという点にある。結末も尻切れだし、ストーリーの進展速度も遅く、かなり出し惜しみしている雰囲気がある。「オイシイところはもう一度お金を払ってパート3を観にキテネ」と言われているようで、なんとも興ざめする。

結論として、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』は、前作の大ファンが、あの世界にもう一度浸るために作られた、バーチャルリアリティ体験映画である。よって、前作をまず見て、イマイチだなと感じる人は、やめたほうが無難だ。何しろ上映時間は150分間もある。予告編だのポップコーンだのを買う時間を含めたら、ほとんど3時間である。あの世界観をゆっくりと、ジョニーデップ演じるスパロウ船長とともに、散歩するように味わう、そういう覚悟がないと、満足を得るのは難しい。

なお、前作と同じく、エンドロールの最後に重要なシーンがあるので、みのがなさいよう。……とはいえ、この作品のエンドロールの長さといったらない。亀有の人々は気が短いのか、それとも作品の出来に不満だったのか、その重要なシーンが始まるころには、90%以上の人がすでに劇場の外に消えていた。



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