『陽気なギャングが地球を回す』60点(100点満点中)

いい線行っているが、終盤に失速

近年人気の若きミステリ作家、伊坂幸太郎の同名小説を映画化したもの。二転三転する終盤の展開と、日本離れした登場人物たちが魅力が娯楽映画だ。

ある銀行で、爆弾騒動が巻き起こる。ところが、そこに偶然居合わせた4人の男女はいとも簡単に騒動の真相を見抜いてしまう。彼らは互いの才能を認め、「俺たちが組んだら、もっと上手くやれる」と話を進め、やがて史上まれに見る鮮やかな手口の強盗犯罪チームとして、頭角をあらわしていく。

この4人の設定が面白い。他人の嘘を一発で見抜く男(大沢たかお)、秒単位まで正確な体内時計を持つ女(鈴木京香)、天才的なスリ(松田翔太)、そして、24時間でも話しつづけられるんではないかと思うほど演説達者な男(佐藤浩市)。最後の一人は、果たして特殊能力といえるのかどうかよくわからないが、ともかくこの4人が各自の才能を活かした銀行強盗を行うというのが、この映画のメインストーリーである。

人物たちのセリフは軽いユーモアにあふれ、泥臭さがない。都会的な雰囲気のクライムアクション映画だ。奇をてらった映像は遊び心に富んでいて、カーチェイスなど、なんと走行する車自体をCGアニメで描いている。当然、片輪走行だろうがなんだろうが、お手の物である。こうした娯楽ミステリ映画は、邦画ではかなり珍しい。

4人のキャラクターが立っている事と、佐藤“フィッシャー”五魚による雰囲気にマッチした音楽、そしてストーリー自体の面白さによって、かなり引き込まれる。

しかし、残念ながらこの映画、最大のポイントであるクライマックスのどんでん返しあたりの展開が弱い。トリックの説明がわかりにくいため、爽快感に欠ける。

ただし、途中までの面白さはなかなかのもの。このセンスで、もう少し演出力が磨かれれば、大化けするであろうと予感させる一本である。



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