『ロンゲスト・ヤード』65点(100点満点中)

ストレス解消には最適の映画

本作を観たソニーピクチャーズの試写室には、待合室に巨大な液晶テレビがあり、いつもいろいろな映画の予告編を映しているのだが、別の作品の試写のときにそれをみて、「ずいぶんと迫力たっぷりで、面白そうな映画だな」と感じたのがこの『ロンゲスト・ヤード』の予告編であった。

これは74年の同名映画のリメイクだから、旧作を知るものには説明するまでもないが、一言でいうと刑務所映画とスポーツ映画の面白いところをあわせた作品だ。主人公の元プロフットボール選手が、刑務所の中で囚人チームを作り、看守チームと最後にアメフトで対戦するというのがストーリー。囚人たちの中から使えそうなやつをスカウトしてチームを作る前半の面白さと、いよいよ試合で日ごろの恨みを返すぞという、後半のスポーツシーンに見所が分かれている。

主演はアダム・サンドラーで、彼はアメリカで一番人気があるコメディアン俳優だから、この映画の予算規模も膨大。なんと90億円という巨費を投じた大作になっている。もちろん、彼のこれまでの主演映画同様、ボックスオフィスも好調で、あちらでは大ヒットとなった。

彼の親友となる便利屋はクリス・ロックが演じているが、この2人は笑いのプロだから、とにかく笑える、ギャグ満載の楽しいコメディに仕上がっている。このへん、オリジナルとはジャンル違うように思えるが、この映画はあらゆるディテールにおいて、74年版を非常に尊重して作ってあるので、まったくいやな感じはしない。あの傑作の雰囲気をしっかり受け継ぎ、現代的なアレンジを加えた、見事なリメイクになっている。

オリジナル以上にトンデモない連中揃いのチームメイトも楽しい。演じるのは、2m18cmのプロレスラーや人気ラッパー、格闘家のボブサップなど、個性派ぞろい。ボブ・サップは、泣き虫黒人の役で、ハマりすぎである。しかし、彼でさえ目立たないくらいデカい男たちばかりなのには本当に驚いた。まったくもって、あの国は凄い。

というのもこの映画、試合シーンに出てくるエキストラは、ほとんどが本物のアメリカンフットボールプロリーグ、NFLの選手たちなのだ。試合場面の迫力は、オリジナルをはるかにしのぐ。オリジナルのファンには、かつての主演バート・レイノルズの出演という最高のプレゼントも用意してある。(それも主要なキャラの一人として)

基本的にはどうしようもないギャグばかりの、いつものサンドラー映画であるから、とにかく無駄に金をかけたバカ映画として観るのが正しい。笑って笑って最後にまた笑って、そのまま劇場を出てコロっと忘れるという、そういう楽しみ方をしてほしい。



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