『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』80点(100点満点中)
このクォリティで、いわゆる"萌え"場面が続出?!
映画版『ハリーポッター』は、監督は変わっても、大まかな雰囲気は変わらずに続いている大人気シリーズだ。基本的には子供たち向けの、大ベストセラーファンタジー小説が原作だが、大人のファンも多数存在する。日本にも、わざわざ原著を訳しながら読む熱烈なファンがいる。
この『炎のゴブレット』は映画版の第4弾。メインキャストは前作までと共通。監督は、シリーズ初の英国人マイク・ニューウェル(「モナリザ・スマイル」など)だ。ハリーポッターはもともと英国の原作本であるから、彼にかかる期待は大きい。シリーズ最大最長の原作を、いったいどうやって2時間37分間にまとめるのか?
主人公のハリー(ダニエル・ラドクリフ)、その親友のロン(ルパート・グリント)、女友達ハーマイオニー(エマ・ワトソン)は、魔法学校の4年生に進級した。今年は、三大魔法学校・対抗試合がなんと100年ぶりに行われるという。これは、3校の代表選手1名ずつが魔法競技を競うものだが、選手選考を行うアイテム"炎のゴブレット"は、通常の発表を行った後、4人目の代表としてなんとハリー・ポッターの名前を告げるのだった。
のっけから、目の覚めるようなクィディッチ・ワールドカップのド迫力アクションで始まる。そこから最後まで、つまらない部分は一切なし、バラエティとアイデアに富んだ楽しいファンタジー映画になっている。
メインストーリーはもちろん魔法学校対抗試合で、なぜハリーが選ばれたのかという謎を含んだまま、各競技が進んでいく。それぞれの競技はVFX満載の見せ場になっていて、それぞれ単独で見ても、十二分に楽しめるレベル。ドラゴンが出て来たり、動く迷路が出て来たり、水中探索が課せられたりと、夢たっぷりで面白い。
何日間にもわたる競技の合間には、ハリーたちの平穏な学園生活が、いつものシリーズどおり描かれる。こちらの見せ場は、3人がはじめて男女を意識する事になるダンスパーティーの場面。ハリーとロンは果たしてどの女の子をパートナーに誘うのか。
このへんは、やたらと甘酸っぱい展開で、なんだか青春学園ラブコメのようだ。それを、『ハリーポッター』のハイクォリティな作風で見られるのだからたまらない。ハーマイオニーの、微妙にゆれる女心がじっくり描かれるこの場面は、彼女のファン(大人)にとってもシリーズ最大の見所となろう。
年齢的に、大人と少女の狭間にあたるエマ・ワトソン。メイン3人の中で、唯一『ハリーポッター』以外の映画出演をしていない彼女は、まさに本シリーズの顔。あどけなさと色気が両立した稀有なる美しさは必見だ。ストーリー上でも、史上最強のツンデレキャラ(註)へと変身しつつあるハーマイオニーを、ファン(大人)は決して見逃してはならない。註:最初はツンツン、仲良くなると可愛くなる女の子キャラの総称
なお、ハリーのファンには、彼がおなじみのユーレイの女の子マートルと大浴場で遭遇、混浴するシーンが大きな見所だ。こちらもまた、シリーズ初の色っぽいシーンで、全裸で慌てるハリーの横に、いたずらっぽく微笑みながら大胆に入っていく彼女の表情がかなりエッチだ。『ハリーポッター』はいつから胸キュン思春期映画になったのだろう。
3大魔法学校の生徒たちがホグワーツに集結するという、世界観がぐーんと広がる壮大な展開の中で、魅力たっぷりの新たなキャラクターも数人出てくる。しかしながら、限られた上映時間の中で散漫な展開になるのを避けるためか、メインの3人から決して焦点をはずさずに物語をすすめたのは正解だった。結果、この第4作はシリーズ中で、最もよくまとまっている。
ヴォルデモート卿との最終決戦を予感させるシリアスな場面もしっかり織り込んであり、2時間40分はあっという間だ。私としても、これは予想以上、期待以上の出来映えであった。シリーズの中でも一番出来が良かったと思う。間違いなく、2006年のお正月映画の中では、ダントツのヒット作となるであろう。