『キャプテン・ウルフ』40点(100点満点中)
大人だけで見るものではないが、作りはしっかり
スキンヘッドがトレードマークのこわ持てアクションスター、ヴィン・ディーゼル主演のファミリー向けコメディ映画。
百戦錬磨の米海軍特殊部隊員ウルフ(V・ディーゼル)は、ある一家を護衛するため、ハウスキーパーとして潜入せよとの指令を受ける。家事などやったこともないウルフは嫌がったが、それ以上に問題なのは、こわ持てのウルフを屁とも思っていない5人の悪ガキどもだった。やがてウルフは、まるっきりいう事を聞かない子供らに、軍隊式スパルタ教育を施すことを決める。
ヴィン・ディーゼルといえば、これまで体を張った男っぽい役柄を中心にこなしてきたマッチョなアクションスターだ。外見はつるっぱげだし、声もドスがきいていてとても怖い。そんな彼が、ディズニー映画らしい子供向けほのぼのコメディに主演することになった。役柄はいままで通り、屈強な海軍隊員というものだが、そんな男が子供らにふりまわされ、ドジをふみ、間抜けなドタバタを繰り広げるという、ギャップを笑ってもらう企画である。コメディがうけやすいアメリカでは大ヒットした。
ヴィン・ディーゼルにとっては、コメディもできると証明したことで、キャリアの幅が大きく広がった。年をとると役がなくなるマッチョスターが、将来の保険として一度は通る道だが、彼は見事に成功したというわけだ。
作品は他愛もない子供映画だが、さすがはアメリカ映画、手抜きはない。ヴィン・ディーゼルは軍人役だというのに、敵役にインチキくさい忍者を配置したことにより、発砲、殺害なんて場面は一切ない。子供向け映画だから当然だが、そうした制約をもろともせず、迫力ある格闘アクションを組み立てたスタッフはさすがだ。それにしても、アメリカって国はこんな子供映画でも、敵国については堂々と「北朝鮮」を実名で名指ししている。どこかの国の亡国のなんとかいう映画と違って肝が据わっている。
大人の観客にとって、この手のドタバタコメディが大して笑えないのは仕方がないが、役者が手を抜いている様子はない。子役たちの演技力は平均以上で、意外にもしっかりとした芝居を見せてくれる。彼らが上手いから、観客は予期せぬ場面でホロっとさせられたりもする。脚本も、きっちりと伏線をはってあり、子供向けながら凝っている。あざとさもない。ハリウッド映画ってのは、こういうところが凄い。
ヴィン・ディーゼルは、相変わらず白Tシャツ一枚でたくましい上腕を見せつける、いつもどおりのキャラクターだ。『四月の雪』のヨン様と違って、ちゃんと自前の上半身を晒してくれるのもファンには嬉しい。筋量はさほどでもないが、なかなかバランスのとれた体をしている。
まあ、大人が見て感心するようなレベルの内容ではないが、作りはしっかりしている。そつのない、といった表現がぴったりとくるアメリカンコメディだ。