『ARAHAN アラハン』10点(100点満点中)

リスペクト&インスパイア超大作

韓国製クンフー映画。主演となる売出し中の若手俳優リュ・スンボムは、リュ・スンワン監督の実弟。

ドジで力も弱い主人公の警察官(リュ・スンボム)は、ひったくり犯の追跡中、謎の女性と出会う。彼女は拳法の達人で、一緒に犯人を追ってくれたのだが、最後の最後で犯人と間違えて主人公に必殺技をくらわしてしまう。気絶した彼が、彼女に担ぎ込まれた謎の道場にはたくさんの達人たちがいたが、彼らは主人公のもつ“気”の潜在的な強さに驚愕し、彼を練習生としてスカウトするのだった。

やがて主人公の青年は強くなり、ヒロインの女の子と共に巨悪と対決するというストーリーだ。まあ、子供や若いカップルが、時間つぶしに見るようなお気楽アクション映画といえる。確かに格闘場面はなかなか迫力があるし、CGなんかを使った見せ場もたくさんある。

しかしだ、それらにまったくオリジナリティがないというのはいかがなものか。

大体、韓国人が作った韓国映画なのになぜ中国拳法なのだ。クンフー映画は香港が腐るほど作っているし、実際クンフーの場面は、どこからどうみても香港映画そっくりだ。

CGを使った他の見せ場も、ビルを飛び越えたり多数の槍が舞っていたりと、ハリウッド映画や中国映画で見たような場面ばかりだ。そもそも、画面の構図までそっくりというのはどういうことか。

きわめつけは音楽で、これはコナミがかつて80年代に発売したファミコン用ゲームソフト『イー・アル・カンフー』のゲームミュージックそのものではないか。ラップ調の歌詞をつけてごまかしているが、電子音ぽい音質まであのゲームの曲そのものだ。これはいくらなんでもマズイんじゃないのかね。しかもその曲がかかる場面は、主人公が槍などを使ったゲームそっくりのクンフーシーンだ。リスペクトなどといってすむ問題ではあるまい(言ったかどうかは知らないが)。

コナミという会社は、バカ売れした恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』のエロ同人ビデオが出たとき、「キャラクターのイメージを損ねる」といって本気で損害賠償請求の裁判まで起こした会社だ。著作権侵害に対しては、おそらく日本のゲームメーカーの中でもっともうるさい部類に入るのではないか。はたしてどうなることやら。

こうした、100%日本のゲームからパクッたシーンがある映画を、日本に堂々と輸出してくるのだからいい根性をしている。しかし、真にみっともないのはそういう映画の権利を買い取って、日本人からカネを取って公開しようとしている映画会社だ。古いゲームだから、恐らく誰も気づかなかったか、もしくはもう買ってしまった後だから、気づかぬふりをして公開しようとしているのかは知らないが、いずれにしても情けない話だ。こんなふざけたモノは韓国にたたき返してやれ。

大体この映画は、あまりに節操がなさ過ぎる。ヒロインは『猟奇的な彼女』そっくりだし、二人が出会う場面など『僕の彼女を紹介します』とまったく同じではないか。アメリカや日本、香港のみならず、自国からも良いトコ拝借とは恐れ入った。

このように、各国からもってきた要素を張り合わせた、フランケンシュタインみたいな映画がこれだ。

それともうひとつ、この映画の主人公を演じるリュ・スンボムという役者、こんなに観客を不快させる男はあまりない。具体的には彼が食事をするときに、口を半開きにして咀嚼音をまきちらしている部分だ。これはどう見ても演出とは思えない。監督は自分の弟のマナー違反くらい注意してやるべきだ。あれでは見た観客が怒りだしてしまう。

はっきり言ってこの映画で満足するのは10歳くらいの子供くらいなものだろう。各シーンのなかにはそこそこ目を引く部分もあったから10点はさしあげるが、われながらなんて優しいんだろうと涙が出てしまうほどだ。



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