『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』15点(100点満点中)
確信的詐欺、わかって楽しめる人こそ上級者
エイリアンと、フランスの人気歌手ヴァネッサ・パラディが戦うSFドラマ。
舞台はどこかの寂れた田舎町。この町のささやかな祭りの出し物のため雇われた、流れ者のスタントマン(ジェイソン・フレミング)がやってきた。ところが彼は町のボスの一人娘(ヴァネッサ・パラディ)と恋に落ち、ボスの怒りを買ってしまう。
いやあ、ひどい映画である。原題とも内容ともまったく無関係なこの邦題、じつにひどい。公式サイトなど行くと、この映画の出演者で唯一名前の売れているヴァネッサのかわいらしい写真とともに、「映画史上最大の衝撃が襲い掛かる!」などと書いてある。ひどい冗談である。
あまり事情に詳しくない人がこれらを見れば、「ヒロインのヴァネッサが、エイリアンと戦うアクション映画だろう」と勘違いしてもやむをえまい。しかし、実際は180度違うといっても過言ではない。
ヴァネッサ・パラディといえば、ジョニー・デップの子供を産んだ事でも知られるフランスの歌手だが、ハッキリ言ってこの映画の中では脇役である。確かにヒロインではあるが登場時間はかなり短く、主人公はあくまでスタントマンの男。エイリアンと戦うのも、ほとんど彼である。ヴァネッサなんて、ろくに戦ってもいない。
そのエイリアンであるが、もちろん有名な『エイリアン』シリーズとはまるっきりなんの関係もない、単にどこかからきた侵略者であって、日本の宣伝会社が勝手にそう名づけているに過ぎない。もちろん、先日ヒットした『エイリアンvsプレデター』とも何の関連もない。
そもそも、エイリアンなる奇妙な生物が出てくるのは相当後になってからであり、前半はスタントマンの主人公とヒロインの恋をヒロインのオヤジが邪魔する、クソ面白くもない恋愛ドラマが延々と続く。
いつになったらエイリアンものになるのかと思っていると、何の脈絡もなくソレが出てきて、町の人々を虐殺し始める。首チョンパやらなにやら、残酷シーン多数である。前半との落差があまりに激しい。
登場人物も、ふざけているとしか思えぬ設定の人間ばかり。(どう見てもぬいぐるみにしか見えない)飼い犬を毎日虐待している頭のおかしな男や、エイリアンの危機にひんした町に突然現れる、30年この日を待っていたなどというオヤジ。しかもそいつは異次元からテレポートしてやってきたそうである。もちろん伏線などまったくない。おまけにそいつは、エイリアンの弱点を知っているのだという。もうムチャクチャである。
ラストシーンもすさまじい。あえて伏せておくが、この監督はヤクでもキメて、そのノリで作ってしまったんじゃないかと本気で心配になった。
企画意図もサッパリわからないし、ヴァネッサ・パラディが本国でどの程度人気があるのか知らないが、こんなバカ映画にでる意義があるのかもよくわからない。あまりにひどい映画をつかんだ日本の配給会社が、ヤケになって暴走しているようで、それはそれで面白いのだが……。まあ、好き好んで地雷を踏みたい人も世の中にはたくさんいるだろうから、そういう人にはとにかく、想像以上に「いっちまってる」映画だという事を伝えておこう。