『ステルス』70点(100点満点中)

最高のバカ映画

最新鋭無人ステルス戦闘機の活躍(?)を描いた軍事アクション超大作。こいつはスゴイ映画ですよ。

舞台は近未来のアメリカ。主人公は、テロ対策チームとして選ばれた最精鋭のパイロット3名。それぞれ新型ステルス戦闘機を与えられ、任務に就こうかというとき、4人目の仲間として最新鋭無人ステルス戦闘機が加わった。人間パイロットの肉体の限界を軽く超えた運動性能、恐れを知らぬ人工知能──あまりに異質、そして優秀な"彼"の加入に戸惑う3人だったが……。

いやはや、久々に大満足の一本であった。やはりハリウッドの超大作というのはこれくらいぶっ飛んでくれないと面白くない。

この映画は、要するに無人ステルス機のコンピューターが落雷一発でバカになって、暴走して世界中に大迷惑をかけるというのが前半の筋書きだ。3名のトップガンと、1機の無人機のハチャメチャな活躍ぶりがたっぷりと楽しめる。

何しろこいつらときたら、その任務からして異常。テロ対策と称して、テロリストのいるビルまで飛んでいって、何の警告もなしにビルごと吹き飛ばすのが仕事なのである。もちろんそのアジトは外国だが、見たところその国のしかるべき筋に事前連絡等している気配はない。ようするに、他国に無断で侵入して、勝手に爆撃して帰るのである(ステルス機は敵のレーダーに映らない)。毎晩そんな事をやっている。

しかも、時には失敗やら暴走やらが起こるから、民間人は千人単位で巻き添えにするわ、自分の国の大切なインフラを壮大に破壊するわ、他国が(領空侵犯に対する当然の権利として)スクランブル発進させた戦闘機とそのパイロットを平気で撃墜して惨殺し、ケロリとしてるわ、まあえげつない事この上ない。それを、なんの罪悪感もなく能天気に描いているのだからあきれる。

挙句の果てには北朝鮮で戦争までおっ始める始末で、しかもそうしたエピソードを「仲間を見捨てぬ人道的なアメリカ軍」的な美談に仕立ててある。クライマックスでは星条旗が誇らしくなびき、感動物語になっている。冗談じゃない、一番迷惑なのはキミたち3人(と1機)だ。世界平和のため、真っ先に落ちて死んでくれ。

……と、誰もが思うであろう作品である。まあ、この前公開された「チームアメリカ ワールドポリス」を見た人なら、あれの最初のシークエンスを実写でやっていると思えばよろしい。ただし問題は、あれは権力を皮肉ったギャグとしてやっているのに対し、『ステルス』は大まじめにやっているという点である。

おまけに、こうしたばかげたテロ対策の政策のみならず、軍事考証的にも滅茶苦茶である。リアリティなど皆無といっていい。ただし、見た目の迫力はスゴイ。空母に着艦するCGの戦闘機など、まったく違和感がない。そもそも本物空母の登場シーンの迫力自体がハンパではない。音響やカメラワークなど、恐らく世界最高、史上最高レベルといって差し支えあるまい。同じ戦闘機映画としてみても、『トップガン』の頃の数十倍は進歩したと感じる。

あとは、ヒロインのジェシカ・ビールがやたらとマッチョで、えらい迫力のビキニ姿を披露してくれているのも見所であった。いかにもアメリカンガールといった、高低差のあるボディがまぶしい。そんな、どうみてもグラビアガールとしか思えない女の子が、ステルス戦闘機を操縦して大量虐殺をやる一方で、同僚の男と恋愛してチュッチュとやっている。あまりにお気楽すぎて、もはやただのバカにしか見えない。

まあ、こういう映画をみれば、アメリカ人の中にはとんでもなくアホな人たちがいるのだなあとよくわかる。何百億円もかけて、こんなバカ映画をせっせと生産してくれる素晴らしい場所、それがハリウッドなのである。



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