『鳶がクルリと』20点(100点満点中)
こんな企画で商売として成り立つのかが気になる
ヒキタクニオの同名原作の映画化。不死身の男、窪塚洋介が友情出演していることでもちょっとだけ話題。
大企業でバリバリ働く貴奈子(観月ありさ)は、ある日、巨大ビルへのモニュメント設置という畑違いなプロジェクトを任される。わずか2週間の工期ではどの職人にも無理といわれるが、凄腕のとび職人集団「日本晴れ」ならできるという噂を聞き、早速そこへ向かう。
身近なお仕事ながら、一般にあまり知る機会のない「鳶」という職業にスポットをあてた人情ドラマ。コメディ要素をちりばめながら、分割やワイヤーワーク合成を使用したポップな映像で見せる。
ただし、ギャグがどれもいまいちで乗り切れない。なによりストーリーがまったく盛り上がらない。この手の話は「鳶職人」たちを魅力的に描き、その仕事ぶりでたくさん観客を驚かせてくれなければどうにもならないものだが、その点が研究不足ではなかったか。つまり、この映画を見ても、恐らく大抵の方は鳶にまったく興味をもてないと私には思えるわけだ。鳶の映画なのに、それじゃやっぱりダメだろう。
もともと、こういう職人ものは地味なんだから、あえて題材にするからには、何かダイナミックな要素を引き出さなければ映画としては成立しない。鳶職人なんて、とくに映画ではあまり扱ってない題材なんだから、いくらでも夢ふくらむストーリーを作れるだろうに、なんでこんなにチンケな話にしてしまうのか。私は原作がどうなのかは知らないが、少なくともこの映画には、原作を読んでいない人々を楽しませようという気概があまりにも足りない。
それにしても、こんなビデオ作品程度の完成度のものを公開してしまっていいのかね。少なくとも私には、どこから見てもこの映画にヒットする要素など、つゆほども無いように思えるのだが。これで商売が成り立つのかどうか、他人事ながら心配になる。