超映画批評『四月の雪』30点(100点満点中)
ヨン様以外に見るべき点なし
韓流キングことペ・ヨンジュン主演最新作。監督は『八月のクリスマス』で知られるホ・ジノ。
主人公の照明技師(ペ・ヨンジュン)は妻が交通事故にあったと聞き、急いで病院に向かう。ところが、そこで知った事実はあまりにも残酷なものだった。妻の車に同乗していたのは長年の浮気相手。つまり彼女は不倫ドライブ中に事故にあったのだった。傷心の彼は、妻も同乗者も昏睡状態にあるなか、妻の浮気相手の若妻(ソン・イェジン)にいつしか惹かれていく。
先日、自身の誕生日(8月29日)周辺に来日して大騒ぎを巻き起こしたヨン様の最新作である。ところで、映画とはまったく関係がないが、黒柳徹子と共演した某テレビの特別番組には笑った。ヨン様でずっぱりかと思いきや、最初の30分くらいはヨン様ゆかりの地などといって、大竹まことと黒柳氏のクソ面白くもない観光地めぐりの映像が続く始末。まるで、一昔前のボクシングタイトルマッチ並のあからさまな引っ張り方だ。この時代遅れぶりが、言ってみりゃ韓流騒ぎの味というやつかも知れないが。
というわけで映画の話だが、一言で言えば「四月の雪」も古臭い。もちろん、冒頭に書いたような設定は一見斬新にみえるが、不倫ドラマとしては新味がない。あまりに類似した米国映画(『ランダム・ハーツ』)が存在するという点も大きなマイナス。ともあれ、こうした設定を冒頭部の興味以外に生かしていない。かといって、普遍的なテーマを鋭く描いているわけでもないから、要するにダメ作というわけだ。キャラクター造形もオカモトのコンドーム並に薄っぺらく、ありきたりだ。
バックに音楽が流れる事は少なく、台詞を極力少なくした演出なども、この監督にとってはかわりばえのないいつもどおりの作風。ただし今回はさほどの効果をあげられず、ただ地味でわかりにくくなっているのみだ。結末も深みがあるわけではなく、単なるご都合的なものに感じられる。女優の演技力にも疑問がある。
ただし、ヨン様だけはなかなか良い。ドラマにしても映画にしても、毎回新たな役柄に挑戦していく姿勢には好感が持てるし、どの役においても演技は安定している。この映画を引っ張っているのは、間違いなく彼の力によるものだ。
彼は期待の濡れ場でも立派なカラダを披露し、ファンを喜ばせてくれる。まあ前作「スキャンダル」に比べればソフトなもので、できればボディビルで鍛えた脊柱起立筋の潜在能力を最大限に生かし、高速ピストンのひとつも見せてほしかったが、そういう映画ではないのでやむをえない。
タレントとしての“設定”がガチガチすぎて、インタビューではまったく面白くない男だが、今後は尻すぼみ確実な韓流の中でも、個人的にはぜひ最後まで残ってほしい一人だ。そして、次回作はそろそろ彼のファンが本来望むような、娯楽色重視の恋愛モノなんかに出てもいいのでは、と期待する。