『自由戀愛 自由恋愛 -bluestockings-』50点(100点満点中)

一部のお年寄り向け映画

女性の陰な内情をありのままに描くことで定評のある岩井志麻子の、島清恋愛文学賞受賞作品を映画化したもの。

舞台は大正初期の日本。女学生時代には「自由恋愛を貫こう」と誓い合った生徒たちだが、しかし現実はそう簡単にはいかなかった。とはいえヒロインの明子(長谷川京子)は磐井商会の次男坊・磐井優一郎(豊川悦司)の妻となり、優雅な暮らしを満喫していた。明子はある日同級生であった千鳥(瀬戸カトリーヌ)と再会し、友人だった清子(木村佳乃)が離縁したとのうわさを聞く。同情した彼女は清子を磐井商会で雇ってやろうと重い、面接用の着物まで調達してやる。その無邪気な親切は清子のプライドをいたく傷つけたが、結局その着物を身につけ面接に挑んだ彼女は、その美貌で明子の夫を魅了してしまうのだった。

大正時代、まだ男女関係が保守的な考えに支配されていたころのお話である。「自由恋愛」を誰よりも強く標榜していた主人公が専業主婦になってしまうといところから物語は始まる。このヒロインは無邪気というかのんきというか、不幸な境遇にたっている同級生に対し、おせっかいにも夫の会社を紹介したばかりか、貧乏な彼女に面接用の立派な着物まで貸してしまうのだ。ところがどっこい、その女性はもとが綺麗なものだから、立派な着物なんぞを着た瞬間、女の魅力を最大限発揮、明子はあわれ夫を寝取られてしまう。

そこから女性同士の争いみたいなものが始まったりするのだが、映画の基本としては女対男の構図となっている。まあ、一般的にいわれるフェミニズムの歴史をなぞったかのような展開となっている。

大正時代を忠実に再現したセットはすばらしいが、この手の話、平凡な女性映画を楽しめるのは、一部の懐古趣味のご年配の方々以外にはいまい。狙いはわからないでもないが、こういう話はもう流行らない。せめて何がしかの新しい仕掛けや演出、そういったものがあればまだ良いが、あまりに無難な線を狙いすぎている。

原作は未読だが、映画を見ても読んでみたいとは思わなかった。つまりはその程度の求心力の映画ということだ。



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