『南極日誌』30点(100点満点中)
映像だけはまあまあ
韓国映画初の南極冒険を描いた大作ドラマ。
世界初の無補給横断を敢行中の大韓民国探検隊の目標は、南極到達不能点(南極大陸の全海岸線からもっとも遠い地点のこと)だ。過酷な行軍を続ける彼らはやがて、80年前の英国の探検隊の日誌を偶然発見する。隊員の一人(ユ・ジテ)が日誌の内容と自分たちの間にある共通点を見つけたころ、彼らに奇妙な出来事が起き始める。
南極では昼しかない夏が6ヶ月続き、あとは夜だけの冬が6ヶ月続く。こういう特殊な場所で、時期的にはもうすぐ冬が訪れるという緊迫感ある設定で物語ははじまる。タイムリミットをすぎたら永遠に闇の世界に飲み込まれてしまう、そんな恐怖が常に観客の身にも付きまとう。周りは一面白い世界。ウィルスすら存在できない極寒の地。とにかく息苦しいその舞台設定を、見事に表現した映像にまずは驚かされる。まさに、体験する映画、といったところだ。
この映画は、そんな異常な場所、南極探検において、徐々に人間たちが狂っていき、狂気の世界に落ちていく様子を描いたサスペンスドラマである。前半は氷をただただ進んでいくだけの内容だが、そこそこに興味をひきつけていく。
後半はいよいよある隊員らの頭がおかしくなっていくわけだが、ここからがどうもぱっとしない。強靭な意思と肉体を持ち、万全のバックアップを準備したうえで挑む探検隊のメンバーが、そう簡単に異常者になるわけがないという現実問題については、もとより横において見ているわけであるが、それにしてもこの探検隊のやってる事はあまりに非現実的で、見ていてさめてしまう。終盤、いくら彼らがはちゃめちゃかつ残酷な行動をとったところで、バカがバカやってらあ、としか私には思えない。はっきりいって、この映画は何をやりたかったのか、じつにわかりにくい。
また、こういう、ある異常者の行く末を描いたような映画はどうも新鮮味に欠け、高い評価をする気になれない。せっかくいい映像を得た割には、あまり楽しめない出来映えにがっかりであった。