『釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった』20点(100点満点中)
惰性で作ったように思えてしまう
西田敏行主演の恒例のコメディ映画シリーズ16作。サブタイトルから想像できるとおり、今回は長崎が舞台となっている。ゲストはヒロインとして伊東美咲、その相手に金子昇、そして口の悪い黒人タレント、ボビー・オロゴンとなっている。
鈴木建設が手がけた橋の連結式に出席するため、社長のスーさん(三國連太郎)とダメ社員のハマちゃん(西田敏行)はそろって長崎県へ。ところが案の定、ハマちゃんは現地の後輩(金子昇)の車で港へ直行、黒人米兵(ボビー・オロゴン)を引き連れさっさと釣りに出かけてしまう。
いつもどおり仕事をさぼって釣りばかりのハマちゃんこと浜崎伝助が今回巻き込まれるのは、金子昇と彼がプロポーズした恋人(伊東美咲)、そしてその気難しい父親(尾崎紀世彦)とのありがちな結婚前トラブルのお話。最初から最後まで予想通りの薄っぺらいドラマで、これはまったく見ごたえがない。「海猫」では体当たりの演技を見せつけた伊東美咲も、まったく存在感を示すことができず、ステーキの脇に転がってるニンジン程度の扱いだ。
何か事情でもあるのか、三國連太郎は今回釣り場面すらなく、ハマちゃんとの楽しいかけあいも少ない。また、谷啓演じる課長が出世していなくなってしまったので、シリーズ一番の見所ともいえた西田とのやりとりも見られなくなった。ミュージカル風に社歌を歌う鈴木建設社員たちというユニークな出だしであったが、全体的には相当パワーダウンした。
また、この監督3作目となる今回はギャグがどうにもさえない。最初に言及したドラマ部分もそうだが、シリーズ自体、惰性というか、無理して作っている感じがしていただけない。途中のアクション場面で登場するイージス艦のハリボテセットも、どうにも笑えない。釣りバカシリーズのウリはこういう種類の笑いではないだろう、という気がしてならない。
このままでは、この人気シリーズの未来は暗い。やがて何時の間にか消えゆく運命ではないのか。松竹にとっては再び1000円興行を敢行して、たくさんのシニアを映画館に呼び寄せる大事な位置付けをした作品なのだから、もっと力を入れてマジメに作れと強く言いたい。でなければ、いっそのこともうやめてしまったほうがいい。こんないい加減な出来では、あまりにお客さんをなめている。