『濡れた赫い糸』30点(100点満点中)

架空の色町“忍山”の雰囲気が面白い

北村一輝、高岡早紀主演の官能ドラマ。架空の色町を舞台に、一人の男と二人の女の運命を描く。

主人公の男(北村)は、ある夜クラブで踊る不思議な女、一美(高岡)を見て、運命的な出会いを感じる。彼女は色町“忍山”で暮らす遊女で、やがて二人はひかれ合うが、いつしか彼女は出所したヤクザの夫の元へ帰ってしまう。

やがて主人公は別の女(吉井怜)と出会うがこいつがまさしくストーカー気質かつ気性の激しい女で、彼は生活をすべて壊され、のちの運命も狂わされていく。その後、結局忍山に舞い戻った主人公は、めでたく一美と再会するのだが……。

時代から取り残されたかのような忍山の世界設定が見事だ。私は当初この話が現代劇だとは思いもよらなかった。この旅館街、色町の独特のムードは妙にノスタルジックで引かれるものがあった。

ここを仕切る男(奥田瑛二)などは、3人の妻と秩序だった暮らしを営んでおり、浮世ばなれしたこの町、この映画の雰囲気を象徴するような存在だ。彼の元で忍山の秩序に染まって生きる主人公が、やがて女の狂ったような嫉妬に人生を狂わされる様子が、ときに官能的に描かれる。

とはいっても、直接的な裸だの過激な濡れ場だのがあるわけではなく、映画は主人公の男の行方をちょいと離れたところから淡々と描く感じ。北村一輝、高岡早紀ともいいムードを出してはいるが、これだけでは少々物足りない。まあレイトショーだから、この不思議な世界観を楽しむだけでもそれはそれでありなのかもしれないが。



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