『ロボッツ』50点(100点満点中)
ある意味、ありえない“内容”に泣けなくないが……
『アイス・エイジ』のスタッフによるCGアニメーション長編映画の最新作。オリジナルの世界観によるロボット社会を舞台に、ひとりの少年ロボットの成長と他のロボたちとの友情を描く。
貧しい家庭に育ち、体も中古部品の集まりで出来た主人公のロドニーは、偉大な発明家になるのが夢。やがて大都会に旅立った彼は、幼いころから憧れる大発明家に会いに行くが、彼の会社では儲け主義一辺倒の新経営者が、町にあふれる中古ロボの一掃を狙う陰謀を画策していた。
この映画の世界には、人間が出てこない。というよりは、人間社会をロボット社会に投影した構図になっている。主人公ら貧乏ロボットは、いつも中古のオンボロ部品で体を構成していてみすぼらしく、一部の金持ちロボットは、最新のピカピカでデザインもかっこいい体を持っている。まあ、貧富の激しい現在のどこかの先進国を誇張して表現したものと思っていい。
そして、グローバリズムの象徴たる悪の儲け主義経営者を、貧乏労働者の象徴のような主人公とその仲間たちが、知恵と勇気を振り絞って打ち倒す、大まかに言えばそういうストーリーである。まあ要するに、古今東西たくさん作られてきた人民による革命映画、左翼的な政治映画の一種である。彼らの理想というか、永遠の悲願を子供アニメの体裁で作り上げた作品といえる。
この手のストーリーは、作りようによっては感動的な名作になるのだが、『ロボッツ』にはなんだか遊びでちゃちゃっと作ってしまったような腰の軽さが感じられてしまい、いまいちだ。内容に新味がないのは当然だが、見せ方を工夫しようとか、ひねりを加えようとした形跡が感じられない。
ごつごつとしたキャラクターもあまり子供ウケするとはおもえないし、これはちょいと難しいのではないか。いまやCGアニメは観客にとっても食傷気味で、よほど変わったことをするか、完成度の高いものを作らないとヒットは望めまい。金属の使用感をあらわした表面処理などには感心するが、それだけをわざわざ見にくる観客も皆無だろう。
私が見た日本語吹き替え版では、主人公を演じた草なぎ剛くんはまだよかったが、ヒロインの声は違和感が最後まで取れなかった。この点も評価を下げる原因になっている。
結局、『ロボッツ』は日本ではちょっと厳しいかな、といった印象が強い。今年の邦画の夏アニメの布陣は相当強力だ。この程度の出来では、ちょっと太刀打ちするのは難しかろう。