『ライディング・ザ・ブレット』30点(100点満点中)
原作ファン以外があえて見る必要は薄いか
ホラー小説の帝王スティーブン・キング(『スタンド・バイ・ミー』『シャイニング』など)が2000年に発表したインターネット小説の映画化。この原作はキングが実際に交通事故に遭い、そのときの体験が色濃く反映された短編といわれており、臨死体験や「生と死」に対する真摯な姿勢が特徴となっている。
1969年のハロウィンのころ、主人公の画学生(ジョナサン・ジャクソン)はマリファナやロック、女の子を楽しむ普通の学生生活を送っていた。しかし、6歳で父親をなくした体験と、あるトラウマが契機となって、常に自分を冷静に観察する別人格を自らの中に作り上げていた。そして誕生日、バスタブにつかっていると突然死神の幻覚が現れ、「手首を切って自殺しろ」とそそのかすのだった。
このあと展開されるストーリーだけをいうと、母親に会いに行こうとした男が体験するデタラメな旅、ということになるのだが、『ライディング・ザ・ブレット』は人間の内面の心の動きを重視した、キングの原作ものにしては異色の一本になっている。超常現象やら恐ろしい化け物といった、ホラー映画らしい要素はあまりない。
それでも、薄暗いメイン州の道路や不気味な墓地など、原作のムードを生かした映像作りはなかなかのもので、そこで起こる奇妙な出来事の数々はそれなりに興味を引く。なにしろこの映画の監督ミック・ギャリスは、スティーブン・キングと6回もコラボしているほど原作者の信頼を得ているヒトで、この映画の版権も1ドルで買ったなどといっているほどなのだ。キングの世界の映像化には、よほど自信を持っているのだろう。
とはいえ、お話自体がそれほどアップダウンがあるものではないから、普通にホラー映画を楽しみたい人には向かないだろう。どちらかといえば原作が好きという方が、どういう映画になるかな〜と興味を持ちながら見るための作品だ。