『リンダ リンダ リンダ』20点(100点満点中)
甘くて切ない痛快な青春映画……ではない
韓国の若手女優ペ・ドゥナ出演の青春ドラマ。80年代の人気バンド、ザ・ブルーハーツを女子高生たちが文化祭でカバーするというお話。
高校最後の文化祭を前に、ギターの骨折などで立ち行かなくなった女子バンドのメンバーたちは途方にくれていた。そんな彼女らが偶然耳にしたのがブルーハーツの『リンダ リンダ リンダ』。シンプルながら感動的な旋律に心奪われた彼女たちは、この曲を残ったメンバーでなんとか演奏することとし、ボーカルは偶然通りかかった韓国留学生(ペ・ドゥナ)を無理やり引き込んだ。そんな無謀な急造バンドで、彼女たちは猛練習を始めた。
『バトル・ロワイアル』でヒロインを演じた前田亜季や、『ローレライ』で物語の鍵を握る謎の女を演じた香椎由宇など、カルト的人気を誇る女優を集めて作った青春女の子映画だが、『リンダ リンダ リンダ』は一般の方が期待するような爽快かつ感動的な女子バンドものではない。
学園を舞台にしたとは思えないほど淡々とした物語で、若い子特有の躍動感はほとんど描かれない。学校生活にはあまりふれず、多くは放課後彼女たちが集まってこまごまと演奏の練習をしているような、そんなシーンが延々と続く。この恐るべき地味さは監督(山下敦弘)の作風だから、この監督のファン以外はキツかろう。似たようなシチュエーションで2時間近くやるわけだから、この手のムードが苦手な人には苦痛以外の何物でもない。
登場人物たちは、時折はさまれるちょっとした笑いのために不自然な演技を余儀なくされ、しかもそれがすべっているという悲惨さだ。たどたどしい日本語でがんばっているペ・ドゥナをはじめ、とても魅力的な女の子がそろっているのに、そうした個性を生かすタイプの監督ではないから、見た目と演出がまったくかみ合っていない。人物に共感もしにくい。
クライマックスの演奏シーンも、ブルーハーツは本来躍動感とせつなさたっぷりの曲が特徴なのだから、もっと元気いっぱいな若々しい映像に合わせたほうが良いはずだ。しかし、この期に及んでもカメラはフィックス(固定)で、ただそのまんまを写すという演出のままだから、全く盛り上がることはない。要するに、そういうものを期待して行ってはいけないということだ。まあ、賛否両論はあるだろうが、私はこの映画はコンセプトからして間違っていると感じた。中身と宣伝文句のギャップも激しい。
ところで、この映画のマスコミ用最終試写は異様に混雑していた。あまりに人が多すぎて、関係者でその回を見ようとした人はあわれ追い出されてしまったほどだ。その“関係者”の人数の多さには別の意味で驚かされたが、いずれにせよ結構な注目を浴びているということか。