『HINOKIO ヒノキオ』65点(100点満点中)
米国以上のCGと、すばらしい子役のハーモニー
引きこもりの少年が、遠隔操作のロボットを通じてガキ大将との友情を深めていく子供向け感動ドラマ。
主人公の男子小学生(本郷奏多)は、研究者の父親が試作した遠隔操作ロボット、ヒノキオを操作して、学校に代理出席してもらっている。彼は過去に事故で母親を失ったトラウマから引きこもりになってしまっており、父親はそんな息子になんとか心を開いてもらいたくてこのロボットを与えたのだが、一向にその気配はなかった。
そんな主人公が、学校で出会った乱暴なガキ大将とヒノキオを通して交流するうちに、本物の友情を知り、成長していくドラマである。まさに子供向けの健全なお話だ……と思うなかれ、「ヒノキオ」は大人が見ても十二分に楽しめる、非常に見ごたえある映画だ。
まず、CGを使って描かれるヒノキオがすごい。ヒノキオとは、軽量化のため一部ヒノキ製であることからつけられたあだ名だが、その流麗な動きや、背景・人物に溶け込んだ質感たるや、とてもCGとは思えない。重量すら感じさせるその出来映えは、邦画史上最高であるばかりでなく、現在のハリウッド映画と比べてもまったく遜色ない。いや、むしろ凌駕しているといっても過言ではない。私は、子供映画でこれほどすばらしいVFXを見られるとは思ってもいなかった。
そして、その圧倒的なリアリティに加え、それに絡む子役たちの存在感が見事だ。とくに、ガキ大将のジュン役の子はすばらしいの一語に尽きる。中盤ではこの子がらみのどんでん返しがあり、気づかなかった人を驚かせる。この場面はある種のマニア、オタクの方にはたまらないであろう。
さらに、ヒロインの子にはなにやら性的虐待の陰も見えるというダークぶり。もちろん、見ている観客の子供たちは気づかないが、大人の観客であればなんとなくそれを理解できる。なかなか厚みのある人間ドラマだ。
ここまでは、現在の邦画エンタテイメントの弱点、「安っぽい」「貧相」といった悪イメージを覆す見事なでき。しかし、邦画ならではの悪い点も多々見られる。そのひとつは、欲張って話を広げすぎた結果、観客が興ざめしてしまうという点。説明もくどく、このセンスの悪さはいかにも……といった感じで残念だ。
とはいえ、それを差っぴいても「ヒノキオ」はよくできており、見る価値がある。子役がうまい映画にはもっとも評価が甘くなるという超映画批評の特性にうすうす感づいている人は「またかよ」と思うかもしれないが、本当にこれは見所がある。小さいお子様のいる方は、真っ先にこの映画を鑑賞することをすすめておきたい。