『ダンシング・ハバナ』40点(100点満点中)

所々前作を思い出させ、それなりに楽しめる

1987年にパトリック・スウェイジ主演で公開され、ちょっとしたダンスブームを巻き起こした『ダーティ・ダンシング』の続編。……というか、リメイクというか、微妙な内容だ。

舞台は1958年、革命前夜のキューバ。そこに18歳のマジメちゃん女子高生(ロモーラ・ガライ)が父親の転勤でやってくる。はじめてみるラテンの陽気なダンスに心奪われた彼女は、ダンスの名手であり、すんでいるホテルのウェイターでもある若い男(ディエゴ・ルナ)と親しくなる。

やがて二人は賞金のかかったダンス大会に出場するため、猛特訓をはじめるという話。二人は見てのとおり、お金持ちのお嬢さんと現地の貧乏な労働者という、いってみれば「身分違いの恋」というやつだ。そこに当時の政治状況が絡み、二人の恋を翻弄していくあたりはちょっと意外な展開ともいえる。

前作同様、非常に音楽がいい。前作のほうがもっといいが。その『ダーティ・ダンシング』のメイン曲も、随所でアレンジして使われており、ファンを喜ばせる。当時私もサントラ(なんとカセットテープ)を擦り切れるほど聞いたものだ。じつに懐かしい。

前作で主演したパトリック・スウェイジも、ちらっと登場する。あのころとかわらないキレのいいラテンダンスには惚れ惚れする。たぶん、新しい主人公よりずっと上手だし、セクシーだ。

前作にくらべると、ダンスハウツーものとしては物足りないが、独特のムードある恋愛映画にはなっている。とはいえ、ダーティダンシングの魅力とはこんなものではない気もする。最初からヒロインが上手なので、男性が教えて輝きを増していく女の子、という構図は楽しめない。

しかし、やはりキューバンルンバをはじめとするラテンダンスのステップは鮮やかだ。こういうダンス映画をもっともっと作ってほしい。かつて私もダンスを習っていたころは、ジャズやヒップポップよりこういうダンスの方がずっと楽しかったし、好きだった。女の子を抱きしめたり、くるくるとまわしたりするのはとても楽しいのだ。ボディビルに傾倒し、やがて体重が100kgを超えるころには、すっかり踊れなくなってしまったが。

正直、これがダーティダンシングの2でなければ、あまり面白い映画ではないだろう。だが、前作のファンたる私にはまあそれなりに楽しめた。しかし、どうして今ごろダーティ・ダンシングなんでしょうなぁ。それが一番よくわからん。それとこの邦題……。



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