『メリンダとメリンダ』50点(100点満点中)
毒にも薬にもならない平凡な一本
ウディ・アレン監督によるニューヨークを舞台にしたラブコメディ。ここんところ、日本では結構短い間隔で彼の作品が公開されている。さすがは多作でしられるアレン監督といった印象で、ファンにはうれしいところだろう。
舞台はあるレストランから始まる。そこでは劇作家とその仲間たちが激論を交わしている。その内容は「人生は悲劇か喜劇か」というたわいもないものだったが、それをめぐって彼らは一人の女性メリンダを主人公にした物語を別々の切り口で語り始めるのだった。
映画は、悲劇版メリンダの物語と、喜劇版メリンダの物語が交互に展開され、それぞれにオチがつくという「一本の映画に二本の劇中劇」の構成になっている。なかなかしゃれたアイデアで、それぞれが監督の得意な小粋なラブコメディとなっている。
ここはニューヨークだが、悲劇版のメリンダは母がパリジェンヌという点をやたらと強調し、自慢ばかりしている(米国の白人はフランス人に対してちょっぴり劣等感を感じているといわれる)事でわかるとおり、ちょいとコンプレックスの強い女性である。そんな鬱っぽいメリンダとは対照的なのが喜劇版メリンダ。こちらはいかにも能天気な展開のストーリーをライトに演じている。どちらも演じるのはラダ・ミッチェル(「フォーン・ブース」の妻役など)。
二つの物語は、それぞれちょっとだけひねりがあり、それぞれの結末を迎える。そして、その後酔っ払いの劇作家たちが、まとめたオチをつける。なるほどとは思うが、いってみればそれだけの話である。毒にも薬にもならない一本だ。喜劇と悲劇のきりかわりがわかりにくい点も不親切だ。
だいたい、ウディ・アレンの作るこのジャンルの映画というのは、どれも似たような俳優、似たような音楽、似たような場所、似たような台詞でちょっとだけ内容が違うといったものばかりだから、相性が合うかどうかですべてが決まってしまうところがある。アレンの世界が好きな人はそれなりだろうが、どうも合わないという人は全部ダメであろう。この映画もその系列からまったくもれていない。
そんなわけで、『メリンダとメリンダ』は、過去のアレン作品をあなたが好きかどうかで見るべきか否かが決まるという、単純明快な作品だ。ただしアレン作品の中では平凡としかいいようのないレベルで、さして特筆すべき点はないように思われる。