『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』50点(100点満点中)
子供向けファンタジー、そつのない作り
世界中で3000万部の大ベストセラー「世にも不幸なできごと」の実写映画化。子供向けファンタジー大作だ。
富豪のボードレール一家の3人姉弟は幼いながらも賢く仲がいい。長女は発明の天才で、その弟は桁外れの読書家、末っ子の妹は何であろうと一度噛んだら離さない赤ちゃん。幸せに暮らしてた3人だが、ある日自宅が火事になり両親が死亡、莫大な遺産を目当てに後見人になろうとするオラフ伯爵(ジム・キャリー)に狙われることになる。
特殊効果や豪華な衣装、セット……とにかくお金をかけたファンタジー超大作だ。内容は3人の個性的な子供たちにふりかかる災難と、彼らがそれをうまい事くぐりぬけていく様子を、ユーモアを交えて見せる娯楽作品。その災難てのは、悪役のオラフ伯爵があの手この手で彼らの遺産を横取りするために起こしている。しかし3人の子供たちの方が常に上手なので、そのたびに地団太を踏むのは伯爵の方、という構図になっている。
伯爵を演じるのはジム・キャリーだが、毎回3時間かけたという特殊メークのせいで、一見それとはわかりにくい程外見が変えられている。ほかにもメリル・ストリープやジュード・ロウ、ダスティン・ホフマンといったオスカー級の名優たちが脇役チョイ役、声の出演などで顔をみせているが、画面に現れている世界観のインパクトが強すぎて、彼らの個性は打ち消されている。つまり、役者目当てで見に行くタイプの映画ではない。むしろ大人の観客にとっては、すばらしいセットや衣装に裏打ちされた独特のムードを楽しむべき一本といえそうだ。
3人の子供を演じる子役たちがとてもかわいらしい。とくに長女役のエミリー・ブラウニングは、オトナのファンがたくさんいるというハリーポッターのハーマイオニー役(エマ・ワトソン)に匹敵するほどルックスがよく、いかにも不幸を呼びそうな美少女ぶりが素晴らしい。
彼女ら3人が、自分たちの特技を生かしたあっと驚く方法で数々の危機を乗り越えていく様子は、最新のVFXを駆使して派手に演出され見ていて楽しい。これらの展開は、シリーズ初期の数冊分をまとめて脚本に取り入れたという。この3人のルックス上の好ましさと、しっかりとしたキャラクター設定のおかげで、早い段階で感情移入が容易に行える。
エンドロールは切り絵調のアニメーションになっていて、これがまた近年まれに見るほどの出来映え。ゴミひとつちらかさず、隅々まで気を使ったテーマパークのようなそつのない作りだ。まあ、大人だけで見るにはアレだが、子供向け映画としてはまあまあといったところではないか。