『甘い人生』55点(100点満点中)

ビョン様最新作はクールなバイオレンス映画

いまや日本でもっとも人気があるといっても過言ではない韓国スター、イ・ビョンホンの最新作。日韓同時公開の犯罪ドラマ。

ソウルの高級ホテルのマネージャー(イ・ビョンホン)は、信頼されるボスから留守中に愛人(シン・ミナ)を見張れと命じられる。彼は、万が一彼女が不貞をはたらいていた場合、殺すか連絡せよといわれていたが、案の定女は若い男を招き入れていた。現場に踏み込んだ彼は、彼女の思わぬ魅力に制裁を躊躇し、男を逃がし、事件をもみ消そうとするが、それはボスへの裏切りにほかならなかった。

この作品でイ・ビョンホンは、先日最終回を迎えた『美しき日々』で妹役を演じていたシン・ミナの魅力にハマってしまうクールな男を演じる。闇社会をそつなく渡り歩いてきた主人公が、一人の女のために道を踏み外し、彼らから復讐を受けることになる。壮絶なバイオレンス描写は本作の見所のひとつだ。

使われる銃はすべて実銃で、格闘技が得意なイ・ビョンホンによるアクションもなかなかの迫力。とはいえ、これはヒーローアクションではなく、あくまでフィルム・ノワール(犯罪映画)の一種だから、全編じっとりと暗く、画面は黒基調で、派手さは一切ない。彼のTVドラマや過去の映画作品におけるラブストーリーとは、まったく異質のものだ。

物語も、結末に含みを持たせてあり、決して爽快感やストーリー性を楽しむ映画ではない。独特の悲劇的ムードと俳優の雰囲気を楽しむような作品で、あまり一般的な内容ではないが、どうしてもビョン様を見たいというファンを止めはしない。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.