『バッド・エデュケーション』60点(100点満点中)

ゲイや教会のタブーを題材に描いたラブストーリー

スペインの人気監督ペドロ・アルモドバル(『トーク・トゥ・ハー』など)の最新作。同性愛を題材に扱った、監督自身の半自伝的ドラマだ。

主人公は若くして成功した映画監督(フェレ・マルティネス)。彼のもとに、かつての親友(ガエル・ガルシア・ベルナル)を名乗る男が脚本を持ってくる。その変貌ぶりを最初はいかがわしく思う主人公だったが、やがて二人の少年時代を描いた脚本の魅力に取り付かれてゆく。

二人の少年時代に起きた、聖職者の絡んだ性的虐待や禁じられた恋(同性愛)のエピソードを、劇中映画の製作という形で追いながら、その脚本を書いた親友の真意と、自らの出演にこだわる意外な真相を最後に明らかにする。

題材として扱ってはいるが、虐待や神父の悪さを告発するような映画ではない。よって、変な暗さや社会派らしい雰囲気はまったくない。それよりは、登場する(とてもキレイな)男同士の愛を描いたラブストーリーの側面が強い。

ガエル・ガルシア・ベルナルは、先日ヒットした『モーターサイクル・ダイアリーズ』で若き日のチェ・ゲバラを演じた役者であるが、本作ではずいぶんとやせて、妖艶とさえいいたくなるセクシーな男を名演している。彼が出ていると、男同士のラブシーンにもあまり違和感を感じないほどだ。

彼をはじめとした俳優たちはいいし、シナリオも悪くない。しかし、何かぱっとしないのも事実。この監督の映画は私的すぎて、たとえば本作では、メインで描かれるスペインにおける宗教教育やその現場の空気感といったものが理解できないと、普遍的なテーマを描いているにしても実感がわきにくい。心に響く鋭いセリフや、美しい美術や衣装、映像美にウットリすることはあるものの、それだけで満足できるタイプの方でないと、少々難しい一本といえそうだ。



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