『フライト・オブ・フェニックス』70点(100点満点中)

大画面で見る価値のあるサバイバルムービー

脱出モノ映画の傑作『飛べ!フェニックス』(1965)をリメイクしたもの。

閉鎖された石油探掘所のクルーをのせた輸送機が、砂漠のど真ん中に不時着した。生き残った10人の乗員乗客は、状況から救助の望みが薄いと知る。やがて偶然乗り合わせた設計士の男は、残った部品で小型の飛行機を組み立てるという奇想天外な提案をする。

ジェームズ・スチュワートら個性豊かな当時のスターキャストをそろえ、145分間という長尺で男くさいドラマを展開したオリジナルにくらべ、このリメイク版にはメンバーに女性(ミランダ・オットー)もいるし、上映時間も2時間足らずとコンパクトだ。そして、CGを駆使した冒頭の墜落シーンの恐るべき迫力で観客の度肝を抜き、まずは40年間の映像技術の進歩を印象付ける。ちなみにこの場面の撮影は、実際に座席の動くセットで行われ、俳優たちによると「ディズニーランドのアトラクションとは比較にならない」怖さだったそうだ。

その後は砂漠からのサバイバルが始まるが、オリジナルでも使われる名セリフがでたりなど、オールドファンを時折ニヤリとさせる。主演のパイロット役デニス・クエイドは、私の個人的な見解では、どこか往年のハリウッドスターを思わせる顔つきの俳優で、こうした古い映画のリメイクにはなかなか似合うと感じる。

飛行機の残骸から飛行機を作るというとっぴなアイデアをはじめ(第2次大戦中の実話を元にしたそうだ)、昼間の砂漠での作業中の描写など、一見無茶な設定が目に付くが、なんとかリアリティ破綻の一歩手前でふんばって、そこそこ楽しく見せている。童心に戻ってワクワクさせてくれる、そんな魅力がある。

「生」の尊さを伝えてくるストレートな物語には好感が持てるし、音響と映像が抜群に良いので、大画面で見て損がない一本だ。砂漠という「もっとも開けた場所での閉塞状況」から、空という「"開放"の象徴的空間」への脱出という鮮やかな構成は、いつの時代にも人々を興奮、感動させる要素にあふれている。ぜひ好きな方をさそってどうぞ。



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