『レーシング・ストライプス』55点(100点満点中)

新味ない予定調和の物語だが、それなりに見れる家族映画

実写とCGの合成で描いた動物ドラマ。

舞台はアメリカ、ケンタッキー州の牧場。心やさしい農場主に拾われたシマウマの赤ちゃん(声:フランキー・ムニッズ)は、仲間の動物たちに見守られてたくましく成長する。彼は、隣の牧場で訓練を続けるサラブレッドたちを見ながら育ったため、自分も見た目がちょっと違うだけで、同じ馬だと思い込んでいる。走るのが好きな彼は、やがて自分もレースに出たいと言い出すのだが……。

CGの力を借りて動物たちが人間のように演技をする、楽しいファミリー映画だ。セリフをあてるのはハリウッドスターによる豪華声優陣。キャスト表にはウーピー・ゴールドバーグ、ダスティン・ホフマンといったといった大御所も名前を連ねる。

サラブレッドの悠々たる体躯に比べたらチビで頭でっかち、不恰好な主人公だが、何しろ他のシマウマを見ることなく育ったので、自分を競走馬だと思い込んでいる。そして、シマウマのくせにとバカにする周囲の抵抗にもへこたれず、大好きな走りで、本物の競走馬たちに果敢に挑むという成長物語だ。

動物たちによるドラマということで、各キャラクターをいかようにも解釈できる。サラブレッド社会に立ち向かうシマウマ主人公は、黒人やゲイといったマイノリティにたとえることもできるし、貧しい階層の労働者の象徴としても見られるだろう。逆に、意地悪なサラブレッド側は、旧態依然とした権力者や差別者側の象徴となる。この手の動物CG実写映画は、そうした記号化をやりやすく、観客がどうにでも感情移入できるというのがひとつの特徴といえる。

CG技術は、自然に見せる部分とアニメっぽく誇張する部分をはっきりさせているので全体としての違和感はなく、洗練されている。レースシーンは様々な工夫により迫力を感じさせ、大人が見ても面白く見ることができる。

問題はストレートでひねりのない単純なストーリーだが、動物たちが演じているとそれなりに見れる。客が脳内でいろいろと膨らましやすいというわけだ。基本的には子供連れで見るような映画だが、動物好きな人やファンタジックな話が好きな方なら、大人でも楽しめるだろう。



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