『あずみ2 Death or Love』9点(100点満点中)
戦国一バカ決定戦 優勝は誰?
悲しき宿命を背負った美少女刺客、あずみの戦いの日々を描いたアクション時代劇PART2。原作は小山ゆう(「がんばれ元気」ほか)、主演はクチビルが魅力的なアイドル上戸彩、新登場で注目すべきはタランティーノ作品「キル・ビル」で見事な存在感を示した栗山千明だ。
舞台は戦国時代の末期、物語は前作の直後から始まる。徳川方の刺客あずみ(上戸彩)は、唯一生き残った仲間(石垣佑磨)とともに最後の標的、真田昌幸を追っている。やがて敵と遭遇するが、現れた謎の山賊軍団にあずみたちは危機を救われる。
さてその山賊集団、リーダー(小栗旬)のお顔が、前作であずみ自らブチ殺した最愛の人そっくりだったからさあ大変。この第2作では、非情の戦士あずみちゃんが、愛を取るかお仕事をとるかで苦悩するという、“オンナノコ”の一面を見ることができる。
上戸彩演じるあずみちゃんは、不思議なことに砂ぼこりの中でも、また戦いの直後でもリップクリームはぬりたて、自慢の茶髪もツヤツヤだ。戦国時代ではあるが、よいコスメショップと美容院を知っているらしい。さすがは凄腕の刺客だ。
彼女はとても強く、前作同様の無敵パワーで敵を斬りまくる。一見、あずみちゃんが振り回した刀に敵のオジサンたちが突っ込んで行っているように見えるが、気にしてはいけない。猫背気味の彼女が、いつもふにゃふにゃ歩いていたり、または走ったりするのを見たら、あれこそが厳しい鍛錬の賜物なんだと思うといい。
そんな彼女は魔法のように、突然お色直しして最後の戦いに挑んでくるが、どこからか取り出した魔法使いのようなマントは、バサバサしていてどうみても戦いの邪魔にしかなっていないかのように見える。しかし、あえてそんな不利な状況を自らに課し、敵と戦うあずみの姿に、観客は深い感動を覚えるのだ。
あずみご一行様が途中で出会う山賊たちも、豊臣方のプロ暗殺者軍団を壊滅させてしまうくらい剣技に優れているが、当時の追いはぎは、みなそのくらい強かったに違いないので気にしてはいけない。
あずみらが命を狙う真田昌幸といえば、徳川秀忠軍を上田城にくぎ付けにし、関ケ原への参戦を阻んだことで知られる知将、実在の歴史的英雄だが、『あずみ2 Death or Love』の中ではただの色ボケジジイ。きっと愛人の女忍者役、高島礼子が色っぽいから、何かに目覚めてしまったのだろう。斬新な昌幸像を描いており、高く評価すべきだ。
……そろそろ真面目な話をするとしよう。まず、『あずみ2 Death or Love』に出てくるキャラクターは例外なくバカで、常識はずれの行動をとったり、無責任なことばかりやっている。死に方も苦笑を誘うものばかりだが、ここまで徹底しているとある意味すごい。
もしかすると、映画ではトンチンカンにみえるさまざまな出来事、人物も、漫画版ではきちんと描かれているのかもしれない。……が、少なくとも映画版「あずみ2」は、戦国一バカ決定戦にしか見えない。漫画版で成立しているリアリティを映画版で再現できないのならば、それは製作スタッフの責任だ。
特に私が本気で残念に思うのは、ただ一人素晴らしいオーラを放ち、上戸を食っていた栗山千明までもが、役柄上、しまいにはバカの仲間入りをしてしまうことだ。恐るべし『あずみ2』の脚本家。
あの内容で2時間20分越えという、恐ろしいことをしでかした前作に比べればマシ(ちなみに本作の上映時間は110分)といえなくもないが、私としてもあれだけ前回キツくいった手前、今回は最高レベルのこころやさしい視点(今度はほめてあげたい)で見ていた。それなのにコチラの我慢の臨界点を悠々と突破してくれるこの破壊力。
ここまでくれば別に何点でもかまわないのだが、すでに前作には10点をつけてしまっている。とりあえず、なんとかパート10までは採点できるよう、この点数にしておいた。次回作も頑張ってほしい。