『シャーク・テイル』80点(100点満点中)
何も考えず、ただ笑って楽しんで帰る映画
アニメ映画史上最大のヒット作『シュレック2』を製作したドリームワークスによる長編CGアニメーション。
主人公のオスカー(声:ウィル・スミス)は、いち労働者としてさえない暮らしをしながらも、いつか成功を手にしたいと願う小魚。一方、街を牛耳るホオジロサメ一家の末っ子レニー(声:ジャック・ブラック)は、ベジタリアンのためサメ社会になじめず悩んでいた。やがて両者は偶然出会い、オスカーがサメ退治を演じる事で二人の望みをかなえようという話になるのだが……。
『シャーク・テイル』は、海中のある町(?)を舞台に魚たちが繰り広げるコメディドラマで、アメリカでは3週連続1位というヒットを飛ばした。まず、見所はなんといっても豪華な声優陣。ハリウッドスターが多数登場し、本人の顔に似せた魚キャラクターの声をそれぞれ演じている。
そんなわけで、字幕を読める大人の方には吹き替え版ではなく、オリジナルの声で楽しむことをすすめたい。それぞれのキャラクターは声をあてているスターの個性やイメージを存分に生かした性格づけがしてあり、キャラクターデザインもめいっぱい擬人化しているから、魚といえど、観客は役者自身の演技を見ているように感じられる。
『シュレック』シリーズを作った会社らしく、ギャグはパロディ満載で大人も楽しめるもの。とはいえ、こちらは「シュレック」のように、ライバルのディズニーに対する皮肉っぽさのようなものは感じられない。個人的な感覚だが、『シャーク・テイル』の方が気持ちよく笑える。
海を舞台にしてはいるが、主人公の魚たちがくらす海底の街はニューヨークそのもの。ネオンの看板なんかもキラキラと輝いている。ストーリー自体にさほど新味がない分、舞台を海にすることで多くのユーモアが入る余地が生まれ、結果的にコメディとしてはうまくいった。とにかく楽しんで帰ってくれ、という作り手のサービス精神を、嫌味なく受け入れることができる。
音楽は『ライオン・キング』『ラストサムライ』を手がけたハンス・ジマーによるもの。よくできたCGアニメと相まって、スケール感を高めるのに大いに貢献している。
『シャーク・テイル』は、笑いをメインにしたアメリカの長編アニメーションとしては比較的日本人の趣向に合っていると思われる。わかりやすい笑いが多いし、声優陣もかなりメジャーだ。逆にいえば、声優陣の名前にピンとこない人は、本作の魅力の多くの部分を楽しめないことになるわけで、そのへんを目安に鑑賞するか否かを決めれば確実だ。なお、エンドロールが遊び心たっぷりにしあがっているから、途中で帰るのは損ですぞ。