『ICHIGEKI 一撃』25点(100点満点中)
セガールが人身売買組織をぶっ飛ばす
スティーブン・セガール主演の犯罪アクション。先日公開されたW・スナイプスの『アウト・オブ・タイム』、近日公開のジャン=クロード・ヴァン・ダム主演『レクイエム』と3本あわせて、「熱い男の祭典<火祭り>燃えてる男大集合!!」と呼ぶ……らしい。要するに、ザクでも100機で襲い掛かればガンダムに勝てるはず、という宣伝戦略である。
元政府機関の凄腕エージェント(S・セガール)は、今は引退してカナダの山小屋で隠居の身。いまやボランティア団体の紹介で知り合ったポーランド在住の孤児の少女との文通が、唯一社会とつながる線だった。ところがある日少女が失踪、不審な影を感じた彼は孤児院のあるワルシャワへ飛ぶことにした。
さて、今回われらのセガールがぶっ潰すのは国際人身売買組織。いたいけな少女らを売り飛ばす外道たちに、セガール拳の天誅が下る。そこのけそこのけセガールが通る、とばかりに無敵のヒーローが悪を追い詰めていく。
それにしても、セガールの映画はどうしてこうもつまらぬ脚本ばかりなのだろう。ここまでなんの特徴もない話を作るなど、狙っても難しいと思うのだが。もしかしてセガール映画の脚本家は、見終わったお客の頭にあのごつい身体のオジサンの印象しか残らないようにしろ、という命令でも受けているのだろうか。
『ICHIGEKI 一撃』にしても、せっかく面白そうな題材を選んでいるのに、あれやこれやと複雑な展開にするものだから、結果としてチマチマした印象になってしまっている。そもそもセガールがそんなにややこしいドラマなど演じられるはずがないではないか。かような無理をさせるものではない。
アクションシーンが控えめな点もちょっと物足りない。珍しい剣アクションも見せてくれるが、やはりセガールの映画では派手な銃撃戦や爆発をもっと見たい。
とはいえ、そんな散々な話でも、彼が出ればそれなりにまとまってしまうというのも事実。特にセガールを補佐する女刑事と悪ガキに妙な人間味があって、3人がいいカンジのかけあいをしている点などは誉めてあげたい。
ワルシャワの美しい風景も見られるし、知的な孤児の少女を演じた女優さんはとてもいい味を出している。見るところがないわけではないから、セガール映画ならそれだけでオレは満足だ! という人は、ぜひとも劇場に足を運んであげてほしい。