『きみに読む物語』65点(100点満点中)
後半に仕掛けがある感動の恋愛映画
米国の人気恋愛作家ニコラス・スパークス原作の、感動ラブストーリー。
老人療養施設で暮らす初老の女性に、ある男が自作の物語を聞かせている。それは、1940年の夏、ノースカロライナ州を舞台にした若者同士の初恋の物語。裕福な家の少女と労働者の父を持つ青年の、立場を超えた情熱的な恋の行方に、彼女はすっかり夢中になるのだが……。
映画のほとんどは、老人が聞かせる物語、いわゆる作中作の再現となる。これはまあ、ロミオとジュリエットの昔からある身分を越えた恋というやつで、なんとも平凡この上ない。青年の美形ぶりに酔いしれ、生き生きと描かれた古きよき時代のアメリカを堪能できるので退屈はしないが、まあ普通である。
これを見ていると、ああ、いかにもニコラス・スパークス(「メッセージ・イン・ア・ボトル」原作など)の甘ったるい恋愛小説の世界だなぁ、という気がするが、さすがに今回は、米国で1年以上ものロングセラーとなったお化け小説の映画化である、そんな思いをふっとばす見事な結末を見せてくれた。
このネタを言ってしまったらこの映画の面白さはすっかり半減してしまうから何も言わないことにするが、これは中々うまい事をやってくれた。泣きポイントは少々わかりにくいが、それは露骨なお涙頂戴演出を行わなかったという事。好みは分かれるだろうが私はこういう静かな物語は結構好きだ。『きみ読む』は、これまでの彼の原作映画のように、いかにも少女向けの子供っぽいつくりではないから、大人の男性がみてもジーンとくるだろう。
結論として、「きみに読む物語」は古典的でベタな作中作を、あくまで「読み聞かせる」というプロットで新鮮によみがえらせたアイデア商品といえる。号泣とまではいくまいが、ホロリとしたい人が見る分にはその役にたってくれるだろう。