『東京タワー』55点(100点満点中)
女性が年上のカップルにオススメだ
43歳の黒木瞳が、ジャニーズ岡田准一と共演するラブ・ストーリー。熟女×イケメン若者という、企画モノ恋愛映画といっていいだろう。
若き実業家の夫を持ち、自身もショップ経営者として成功する41歳のヒロイン(黒木)は、友人の18歳の息子(岡田)と恋に落ち、東京タワーの見えるマンションでデートを重ねている。一方、彼の悪友(松本潤)も年上の人妻(寺島しのぶ)と、エスカレートしていく過激な恋愛を楽しんでいた。
上記2カップルとも、いわゆる「年上好きの若者」と「熟女」の組み合わせであり、当然のこと世間で言う「不倫」である。とはいえ、その背景は微妙に異なる。
黒木×岡田のほうは、「愛した女性に運悪く夫がいた」「夫がいるのに恋をしてしまった」という本気の恋パターンである。対して松本×寺島のほうは、一応心は入れ込まずに付き合い始めたものの、「人妻の肉体に溺れて別れるのが惜しい」男と、「つまらないとはいえ結婚生活は捨てられないのに、心身ともに若い男にハマってしまい一種の錯乱状態」の女というカップルになっている。
前者は不倫を肯定的に描く場合の常套手段で、年齢以外さほどの真新しさはないものの、映画のメインストーリーにはふさわしい話といえるだろう。後者はより「現実世界にありがち」なパターンを踏襲し、見ている観客を楽しませてくれる内容になっている。この組み合わせはこの手の「恋愛娯楽系」ともいうべきジャンルの映画としては良いアイデアで、見ていてとても楽しめる。
女性の観客を大いに意識しているため、男性側キャスト二名には人気のアイドルをあててある。岡田くんは、まるで女性のようにつるつるとした肌が綺麗な全身ヌードを披露している。ヒロインの二人も年齢の割にはお見事なセミ・ヌードで応える。おしゃれな感覚の映像だから、絡みのシーンにもいやらしさはない。男性側の演技力には難ありだが、その辺はルックスの良さで相殺してくれということであろう。
不倫ドラマというと、ポマードの香り漂うようなエロい中年同士の濡れ場と、家庭崩壊、ハイ心中〜、といったお先真っ暗なオチが思い浮かぶが、『東京タワー』は男の子がまだ将来のある若者なので、そうした悲壮感とは無縁だ。そこがなかなか斬新で、ラストも希望が見えて良い。
相変わらず色っぽい黒木のあえぎ声や、とってもリアルな寺島のストーカー演技、男の子二人が発する熟女必見の数々の名セリフなど、見所は多い。現在進行中の「女性が年上のカップル」が見る場合、男女ともかなり楽しめるはずだ。逆に、「不倫や浮気なんて絶対許さない」的な考えの人や、「女性が年下の方が好き」といった人には、この映画の魅力はまったくわからないだろう。