『ネバーランド』75点(100点満点中)

あまりに感動的な「ピーターパンの出来るまで」

名作「ピーター・パン」の誕生秘話を、半フィクションで描いた感動物語。ジョニー・デップ(「パイレーツ・オブ・カリビアン」ほか)、ケイト・ウィンスレット(「タイタニック」ほか)、ダスティン・ホフマンといった演技派競演による、ピーターパン誕生100周年にふさわしい良質なドラマだ。

舞台は1903年のロンドン。主人公の劇作家(J・デップ)は新作の不評で落ち込む中、気晴らしの散歩中にある未亡人一家と出会う。その子供たちのひとり、なぜか空想の世界で遊ぶことを拒絶する三男のピーター(フレディ・ハイモア)に強く惹かれた彼は、やがて一家と積極的に付き合うようになる。

未亡人(K・ウィンスレット)とその子供たちと度々会うことであらぬ噂を立てられ、妻との仲がぎくしゃくしながらも、彼はピーターやその家族と深く付き合って行く。一家の中に自らの少年時代と心の傷を見た主人公は、彼らを救いたいと思うとともに、自らの情熱を新作の執筆にぶつけていく。そうして出来たその新作劇こそ、あの「ピーター・パン」というわけだ。

映画の終盤で、未亡人一家にとってある大きな事件が起こる。そのラストで主人公が愛する人のために再現するネバーランドの姿は、まさに映画らしいダイナミックな見せ場になっており、大きな感動をもたらす。あのピーター・パンの創作にこんなに美しい愛のエピソードがあったなんて……と、涙ナシには見られない。

子役を含め、演技力には文句のつけようのない役者陣と、抑え気味に演出する監督のおかげで、重厚かつ穴の少ない良質な感動ドラマに仕上がった。地味ながら心に響く音楽もたいへんよい。

真面目過ぎて、とくに前半は抑揚に乏しく退屈気味ではあるが、終盤の感動シーンで大抵の方にとっては帳消しといった印象になるだろう。「ピーター・パン」はいいファンタジーだが、その「出来るまで」もとてもいい物語だ。この作品の根強いファンにとっては必見の傑作といえるだろう。



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