『銀のエンゼル』65点(100点満点中)
心温まる深夜のコンビニ人間模様
北海道では誰もが知っている人気タレント鈴井貴之の監督作品第三弾。北海道のとあるコンビニエンスストアを舞台にしたハートウォーミングな人間ドラマだ。
コンビニエンスストア「ローソン」のオーナー店長(小日向文世)は、妻の入院をきっかけに深夜勤務も務めるようになった。そこで彼は、昼間とはまったく違った個性的な客層に驚くと共に、妻や従業員ですら当然のように知っていた高校生のわが娘のことを、何一つ知らない自分に気づき愕然とする。
現地の人気監督による最新作ということで、北海道地区では10月から先行公開されていた作品だ。深夜のコンビニという、個性的な人間たちの宝庫を舞台に、娘と父親の確執をメインとした幾人ものエピソードが並行して描かれる。全体に一貫するのは人々を見つめる監督のやさしい視点だ。
深夜のコンビニは、このドラマの中の店に限らず、変な客が多い。かくいう私も、かつてバイトしていたころには、実に色々な事件(?)にでくわしたものだ。酔っ払ってからんでくる変な人や、毎日病的なまでに同じ商品を買っていく謎の人、時には中学生くらいの女の子が真夜中に一人でやってきて、朝まで一緒に話してたなんて事もあった。バイトの中にはバックヤードで飯島愛の裏ビデオを見てるヤツがいたりなど、今考えるとメチャクチャな店もあった。
まあ、私の体験談はその辺にして映画のほうであるが、大げさなお涙頂戴があるわけではなく、見たあとにほんのりと、ほのぼの気分になれるといったタイプの作品だ。
演じる人たちも上手だし、キャラクターも立っている。大きな感動を得られる映画ではないが、観客の心をちょっぴりいい気分にしてくれる。そして、見ると北海道に行ってみたくなる。きっと、鈴井監督もそのあたりを狙ってこの映画を作ったのだろう。だとすれば、十分にその狙いは成功といえる。