『マイ・ボディガード』55点(100点満点中)

リアリティがやや欠如しているのがネック

オスカー俳優デンゼル・ワシントン&天才子役ダコタ・ファニング競演の、少女誘拐と復讐のドラマ。原作はA・J・クィネルの小説『燃える男』。

長い間、米軍で暗殺の任務をこなしていた主人公ジョン・クリーシー(D・ワシントン)は、その血なまぐさい仕事に嫌気がさし、同時に自らの人生にも無気力になっていた。そんなある日、メキシコで活躍中の米国人実業家の娘(D・ファニング)のボディガード職を紹介された彼は、純粋でやさしい少女と交流していくうちに、心を開くようになる。ところが、凄腕の彼が護衛していたにもかかわらず少女は武装集団に誘拐され、自らも瀕死の重傷を負ってしまう。

演技派キャストをそろえた重厚なアクションバイオレンス作品だ。舞台はメキシコだが、誘拐事件が頻発する犯罪大国の側面を重点的に描き、劇中の少女もついにビジネス誘拐団の魔の手にかかってしまう。前半は主人公と少女の交流を、後半は主人公が鬼のように豹変するすさまじい復讐の旅をじっくりと描く。

しかし、たいして演出効果のない凝った映像による遊びが多いためテンポが悪い。さらに上映時間2時間26分と長大なわりには、肝心の“ある事項”についての説明がない。銃弾と人体の関係についてのリアリティも薄いため、どうもシリアスな話の割にはご都合主義の香りが漂う。ラストのせつなさ、衝撃もこれでは薄まってしまう。

人気子役のダコタ・ファニングは相変わらずえらい美少女で、演技の上手さ(というより画面での存在感)が図抜けている。ただ、彼女の運命について早い段階で予想がつくというのはストーリー的にはいただけない。

とはいえ、前半の芸達者二人の見ごたえある競演や、復讐の過程の面白さ、個性的な脇役陣をみるだけでも、ある程度の満足は得られるかもしれない。駄作であるというわけではないので、そのへんはまあ、お好みで。



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