『ふたりにクギづけ』55点(100点満点中)

差別など吹っ飛ばす勢いの明るい映画

結合双生児(俗にいうシャム双生児)が主人公という、きわどいネタのドタバタコメディ。人気スターのマット・デイモンが主演。

主人公は腰の部分で体がくっついている結合双生児の兄弟。弟(マット・デイモン)は奥手で、長年のメルトモにはいまだに自分の境遇を打ち明けられない。社交的でナンパもお手の物の兄がカジュアルセックスにふける横で、今日もさびしくメルトモを思っている。そんなある日、映画スターを目指す兄は、ついにハリウッド行きを決意するのだが……。

フリークスを思い切りネタにした、すごい映画の登場だ。日本での公開にはさすがにどの会社も躊躇したようだが、なんとか配給会社も決まり無事封切られることになった。それにしてもこの邦題はすごい。なんといっても文字通りクギづけなのは兄弟二人なんだから。

映画自体はそれなりに製作費をかけて作られた立派なもので、出演者もマット・デイモンやエヴァ・メンデスといった人気俳優をはじめ、元歌手のオスカー女優シェール、演技派ナンバー1のメリル・ストリープなど、そうそうたるメンバーがそろっている。こんな豪華キャストでよくこんなとんでもない映画を作れたものだとまず驚く。

内容は、結合双生児の身体的特徴をネタにしたギャグがバンバン飛び出し、その奇形を利用して金儲けをたくらむショービジネスの世界のいやらしさも隠さず描く。障害者のセックスも遠慮なく描写している。しかし、主人公の双子自体のキャラクターからして“暗さ”とは無縁で、差別や好奇の視線などケラケラと笑い飛ばしてしまうような明るい映画なので違和感は感じない。

映画の都で苦労する二人だが、ハリウッドでの最初の友達になる女優志望の巨乳ギャル、エイプリル(エヴァ・メンデス)のノーテンキさには観客としても救われる思いがする。こうした脇のキャラクター作りがなかなかうまい。なんだか、ハリウッドならこんな女の子やエピソードもありえるかな、と思わせるあたりが楽しい。

内気な弟が、兄と結合していることを必死に隠してメル友とデートする姿は滑稽で笑えるし、それに必死に協力する兄とエイプリルの姿はなんだか泣けてくる。結局、終わってみればごくごくまっとうなハートウォーミングコメディであった。アメリカ映画、恐るべしである。



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