『僕の彼女を紹介します』35点(100点満点中)

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2004年の最後を飾る韓国映画の話題作。大ヒットラブコメ『猟奇的な彼女』の監督&主演女優のコンビによるラブストーリー。

街で偶然、逃亡中のひったくり犯を目撃した若き婦警(チョン・ジヒョン)は、追跡の末、見事に逮捕する。……が、よくよく話を聞くとその気弱な男(チャン・ヒョク)はどうやら真犯人を追っていた善意の市民だと判明する。一向に謝ろうともしない頑固な婦警と彼は、それでも奇妙な縁で引かれあっていく。

今年は韓流ブームということもありたくさんの韓国映画が公開されたが、最後の最後にまたトンデモな映画がやってきた。何しろこの映画、最初はシリアスに始まったかと思うと突然お気楽ラブコメに変貌、やがて冬ソナ風メロドラマ路線に変更したと思いきや今度はハリウッド風アクションになり、あげくの果てにはデミ・ムーアの『ゴースト』になってしまうのだ。面白いものは何でもぶち込めばいいと思っているのだから恐ろしい。

物語の節目では、雨の中をなぜか二人ずぶ濡れで踊るシーンがスローモーションで撮られていたり、指鉄砲でうちあっておどけるシーンがあったり、カメラが女の周りを何十周もぐるぐる回ったりと、いったい何年前の演出だといいたくなるような恥ずかしい要素が満載だ。

XJAPANの『Tears』を、TOSHIのヴォーカル付き、YOSHIKIのオーケストラバージョンともに何度も流すにいたっては、見ているだけで恥ずかしくなる。そのほか音楽は、アメリカのオールディーズやクラシックの有名曲などを無節操に流すことで、全体のごった煮感をさらに高めている。この選曲センスには苦笑するほかない。

チョン・ジヒョンのガンアクションもすごい。演じるにあたって彼女は警察だかどこだかで銃の撃ち方を本格的に習ったそうだが、教えた警官はすぐに辞表を書いたほうがよい。あと彼女についていえば、ああいうアゴナシの顔は正面下からの角度は基本的にNGである。ところが例の『ゴースト』風クライマックスにおいて、私たちはそのNG顔をこれでもかと見せられる。正直、物語に没頭する以前に笑いが出た。ブサイクな泣き顔とマヌケな男の顔。あんな重要なシーンでいったい何という芝居をさせるのかと思う。

ストーリーも、伏線は張りっぱなしで放置、たいした意味もなく人が死んだり生き返ったりと豪快そのもの。同じクァク・ジェヨン監督による『猟奇的な彼女』には荒削りながら誉めたくなる要素がたくさんあったが、『僕の彼女を紹介します』は冗談としか思えない内容で、ラブコメディからラブをはずしてほしいと強く願う。

それにしても、韓国ではソフトマゾが流行っているのか、こうした毒舌美少女ものを同じ監督とキャストで作ってしまうことには驚く。ただ、「猟奇的な彼女」ほどではないにしても、ラストにはある種のどんでん返しがあるし(邦題もぴったりだ)、このハチャメチャ感は韓国以外の映画では味わいがたい。

そういう意味では見所の多い映画であり、人によっては意外にオススメなのである。たとえば成熟したカップルにとってこのような「まじめに作ったのに結果的に大きく外している」痛い映画は、後々の話題に事欠かないものであり、デートにピッタリであることは間違いない。毒にも薬にもならないものを見るよりは、はるかに楽しめるだろう。もちろん、「冬のソナタ」や「美しき日々」あたりをみてリアルに涙を流せるような純情な方にとっては、普通に「感動ラブストーリー」として見ることだって、決して不可能ではないはずだ。



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