『あゝ!一軒家プロレス』55点(100点満点中)
5億円をかけた豪華な自主映画
アダルトビデオ最大手ソフト・オン・デマンドの社長高橋がなりが、テリー伊藤らと製作した自主映画。上映劇場募集のTVCMが話題を呼んだが、このたびめでたく新宿シネマミラノでの上映が決定した(R-15指定)。
人気レスラーの獅子王(橋本真也)の自宅新築パーティーで、彼に恨みを持ったレスラー(ニコラス・ペタス)の乱入を契機に大乱闘が始まる。出席していたレスラーたちが大暴れし、やがて新居は大破。しかも獅子王の愛妻が負傷し、彼はその治療費と自宅の再建のため大借金を背負うはめになる。
自主映画といいながらも総製作費は5億円、現役プロレスラーの橋本真也やK1選手のニコラス・ペタス、映画初出演のアイドルソニン、そして演技派の佐野史郎などのキャストをそろえた、ある意味贅沢な作品。ゲスト的に顔を出す著名な出演者も何名かいて、時折おやっと思わせる。
内容はおバカ映画に属するもので、ほぼ出ずっぱりの橋本真也を中心とした肉弾アクションが主な見所の映画だ。愛する妻のために命をかけて戦う主人公……というストーリーが一応あるが、佐野史郎くらいしか演技できる主要キャストはいないので、それは二の次三の次であろう。
AV大手のソフト・オン・デマンドが作っているからというわけでもなかろうが、ソニンちゃんと橋本真也のちょっとセクシーな(……というよりエロい)場面があったりする。彼女は劇中で本物の女子プロレスラーのエイプリル・ハンターと、なかなか迫力のあるプロレスシーンを演じている。アイドルにしては肉付きのよろしいボディが妙にこの場面によく似合っている。
冒頭の、新居での大乱闘シーンなどは顔ぶれがなかなか新鮮で、アクションもバカらしくてかなり楽しめるのだが、後半になるにしたがってテンポが悪くなるのが惜しい。アクションも単調になってゆく。また、主人公の奥さんが奇病にかかるが、これは中途半端に気持ち悪いだけで映画の面白さに関して効果をあげていない。ちょいと余計なアイデアだった。
伝統的なやり方とは違う方法で映画を作り、宣伝していることで話題になっている本作だが、せっかくAV業界の雄たるこの会社の名前を前面に押し出したものを作るのであれば、もっと彼らの得意分野が生きる要素を入れ込んでもよかったような気がする。それでもおバカ映画としてはコンセプトもしっかりしているし、退屈するような出来ではない。話のタネに見る程度の気楽な気持ちで劇場に行けば損をすることはないだろう。とくに、あなたが橋本真也のファンなら、とりあえずは押さえておきたいところだ。