『恋文日和』70点(100点満点中)

笑っていたのにいつのまにか泣けてくる、センスのよい恋愛映画

ジョージ朝倉の人気漫画を原作を元に映画化した作品。それぞれ別の監督による、4話オムニバスのラブストーリー。

1本の短編を4分割し、その間にそれぞれ3つの独立したストーリーを挟むという構成。最後まで見ると、これがまた絶妙な効果をあげていることがわかるだろう。それぞれの物語は別の監督によるというが、全体のテーマとして「恋文」というものがあり、ムードはほぼ統一されているので違和感はない。

新進監督と若手中心の俳優による4つのストーリーはどれも非常に優れている。肩に無駄な力が入っていない、とてもセンスがよい演出には好感が持てる。たとえばラブストーリーだからシリアスで凝った場面があるが、直後にそれを茶化して笑わせるといった感じで、見ていて気恥ずかしくなることがない。私はこのスマートな映画を、コテコテ演出の韓国ドラマに食傷気味の方や都会のカップルに、ぜひ強くオススメしたい。

セリフも役者も気取っておらず、見ていて気持ちがいい。音楽は曲自体もいいし、使い方もうまい。それぞれのストーリーは短いのでテンポがよく、恋のせつなさ、やさしさ、そしてドキドキを上手に描いている。見ていると自然と心がやさしい気持ちになり、笑っているのにいつのまにか涙が流れている。

やはりラブストーリーというものは、このくらいカジュアルで軽いものがいい。バカ正直なアメリカ製ロマコメも悪くはないが、日本人が見るならば明らかに『恋文日和』の方が心に響くはずだ。特に、今現在、恋をしている人に向いていると思われるこの作品を、私は今週のオススメとしたいと思う。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.