『たまもの』40点(100点満点中)

一般劇場で再公開される異色のピンク映画

林由美香主演のピンク映画。もとのタイトルは『熟女・発情 タマしゃぶり』というもので、好評につき今回一般劇場で公開されることになった。日韓文化交流として、チョンジュ国際映画祭の招待作品になっているのも話題だ。

ボウリング場で働く無口な30代女(林由美香)は、出会ったばかりの郵便局員に恋をする。毎日弁当と夕食を作り、セックスも含めて尽くしぬいた彼女だったが、逆にうるさがられて捨てられる。だが、彼女はこの恋をあきらめることができなかった。

数百万円という低予算ながら高価なフィルムを使って撮影するピンク映画は、NGの少ない擬似本番とアフレコでの撮影が基本だ。本番の迫力を何度でも撮影可能なビデオカメラで写しこむアダルトビデオとはそこが大きく異なっている。

ところがこの『たまもの』は、安いギャラながら主演女優の林由美香がオール本番(つまり実際に相手の男優さんとHしている)に挑み、おまけに音声同時録音で撮影された。監督のいまおかしんじが、「ヒロインにセリフがない分、息遣いや足音までリアルに撮りたい」と考えたため、こうした異例のやり方になったという。

そんなわけで、本作のヒロインにはラストまでセリフがない。そのかわり、部屋にかざられたボウリングの玉が意味不明なセリフをしゃべるといった、奇妙な世界になっている。65分間しかないからストーリーの進行が早く、適度にお色気シーンが配置されて見やすく作られている。AVと違って結合部分を見せないから、モザイクが入ることもなく、古典的かつ間接的な方法でエロを表現する。

中年になろうかという女性が、決していい男というわけではない(むしろろくでもない)男に執着する様子は、セリフなどなくとも不思議とリアリティがある。作家性が強く出るといわれるピンク映画らしい個性的な作品に仕上がっている。

もちろん、超低予算だから多くは望むべくもないが、こういう映画をユーロスペースのような小さな映画館で、レイトショーとしてみるのも意外におつなものだ。



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