『コニー&カーラ』65点(100点満点中)

笑いと涙の絶妙なバランス

製作費の50倍近くの興行収入を上げ、2002年のアメリカ映画界を揺るがす大ニュースとなったコメディ映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』の主演&脚本のニア・ヴァルダロスが、再び主演と脚本を担当して作った作品。

将来の大スターを夢見る売れない女性デュオの二人が、偶然マフィアの殺人現場を目撃、逃亡生活をするはめになる。二人は正体を隠すべく、女装した男性(ドラッグクイーン)の歌手に化け、毎夜ゲイクラブのショーに出て生活費を稼ぐが、女性らしいよく伸びる歌声と毒舌トークで、予期せぬ大人気となってしまう。

上記ストーリーも、最後に感動シーンが用意されているところも『天使にラブソングを…』(92年)を髣髴とさせる。そんな『コニー&カーラ』独自の特徴としては、ノーマルな女性がオカマに化けることで、マイノリティの苦労を身をもって知るというところ。映画はそれをときにギャグとして、ときにシリアスなものとして描いているが、親しみやすい主人公二人のキャラのおかげで、観客も実感を持ってそれを味わうことができる。映画のテーマをわかりやすく伝える手法としては成功といえる。

仲間にもお客さんにも自分たちが女性だということを知られてなはらない生活というのは、コメディの要素がたくさん含まれているし、カミングアウトできないゲイの立場とそっくり同じで、なかなか面白い構図だ。また、せっかくいい男性と出会っても、恋すらできないもどかしさなどをうまく絡め、興味をひきつけるドラマ性を生み出している。

それにしても主演の二人の女性の女装姿?はえらい濃さだ。歌っている姿はド迫力で、つけまつげはクソ長いわ、化粧は数センチくらいあるんじゃないかというほど厚いわ、口がやたらデカく開くわで圧倒される。キモチワルイ事この上ないが、いつのまにか愛しくなってくるのはわれながら不思議だ。

彼女らをとりまくゲイ仲間たちも実にさわやか。差別されがちな立場なのに、いや、だからこそ暗さなど微塵も感じさせない前向きな姿が頼もしい。明るく楽しい音楽と、そこに見え隠れするほろ苦い現実。『コニー&カーラ』は笑いと涙のバランスがよくとれた出来のいいコメディ作品。気持ちいい感動がほしい方にぜひおすすめしたい一本だ。



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